宇佐神宮 権宮司 大久保博範さん(右)と安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二

ご縁と巡り合わせが始まり。宇佐神宮御鎮座1300年記念、限定ワイン醸造プロジェクト

対談:宇佐神宮 権宮司 大久保博範 × 安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二

全国の八幡神社の総本宮である大分県の宇佐神宮は、2025(令和7)年、ご祭神の八幡大神(はちまんおおかみ)が本殿に御鎮座されてから1300年を迎えました。三和酒類のワインづくりを担う宇佐市の安心院(あじむ)葡萄酒工房は、この慶事に際して、宇佐神宮境内で自生する野生ぶどうを使用した限定ワインを、秋の奉納に向けて製造しています。8年がかりで三和酒類に働きかけた宇佐神宮 権宮司(ごんぐうじ)の大久保博範(おおくぼ・ひろのり)さんと、安心院葡萄酒工房 工房長の古屋浩二(ふるや・こうじ)が、宇和神宮限定ワインプロジェクトを熱く語ります。
文:青柳直子 / 写真:三井公一

地元・宇佐への両者の想いが重なる

――宇佐神宮の御鎮座1300年を記念する限定ワイン生産にあたって、お二人はどのような立場・役割を担っておられるのか、教えてください。

大久保 私の役職は権宮司です。「権」は仮という意味で宮司の補佐役です。

古屋 会社組織に例えると副社長のようなお立場でしょうか。

大久保 そうですね。もう少しご説明しますと、全国に神道系の宗教法人は10万社くらいあるのですが、神社本庁*1がまとめている社が約8万社。その内、いわゆる「別表に掲げる神社*2」が全国に350社。そのなかでも権宮司職を置いているのは約60社で、大分県では宇佐神宮1社だけです。非常に珍しい職なので、皆さんあまり聞いたことがないと思います。

宇佐神宮では上から宮司、権宮司、禰󠄀宜(ねぎ)、権禰󠄀宜(ごんねぎ)という順番になっていまして、私たちの世界では権禰󠄀宜になると一人前の神職として認められます。宇佐神宮では神職の職責とは別に部課長制を敷いていて、私は総務部長と祭務部長を兼任、令和7年宇佐神宮勅祭・御鎮座1300年奉祝行事の企画立案も担っています。そのなかのひとつが御鎮座1300年を奉祝するワインの醸造です。*1 神社本庁:伊勢神宮をトップとする日本最大の神道系の包括宗教法人。
*2 別表に掲げる神社:神社本庁が包括する神社のうち、同庁が定める一部の規模の大きな神社。「役職員進退に関する規程」の別表に記載されていることからこう通称される。「別表神社」とも。

宇佐神宮 権宮司 大久保博範さん宇佐神宮 権宮司 大久保博範さん

古屋 私は三和酒類の運営する安心院葡萄酒工房 工房長/ヴィンヤードマネージャーという立場です。これまで20年以上ワインの研究開発・製造に従事してきました。当社では地元・安心院町産のぶどうを使ったワインづくりを1971(昭和46)年から行っており、2001(平成13)年の安心院葡萄酒工房立ち上げ時からは、品種開発も含めて安心院の地に合うぶどう品種の栽培に取り組んできました。そして2006(平成18)年からは安心院町産のぶどうのみを使ったワイン生産に舵を切りました。

そういったなかで、2010(平成22)年から大分県農林水産研究指導センターと一緒に、宇佐市に自生している野生ぶどうのエビヅルを、シャルドネやメルローなどの既存品種と交配させるという新たな品種の開発を行ってきました。そして今回、宇佐神宮限定ワインの醸造に使用したのが、このエビヅルと既存品種を交配させたぶどうです。

安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二

背景には、地元を活性化するための商品をつくりたいという私たちの強い想いがあります。地元の産業・農業を大きくすれば雇用が増えますし、ワインができればそれを求めて人が集まってきます。安心院葡萄酒工房も人を呼ぶためのひとつの場所なんですよね。このような想いでつくったぶどう品種を地元の祭事でご利用いただけるのは非常にうれしいことです。なかでも宇佐神宮さんといえば、誰もが知る神社ですよね。東京で安心院といっても通じないですが、「宇佐神宮がある宇佐です」と言えば、ほぼ皆さんご理解いただけるんですよ。

由緒正しき境内から自生の野生ぶどうの種(しゅ)を採取したのは必然だった

――それでは改めて、宇佐神宮の「御鎮座1300年」を記念するワインをつくることになったきっかけとその経緯を教えてください。

大久保 私は、2015(平成27)年4月1日に、京都の石清水(いわしみず)八幡宮から転任してきました。その年の5月に宇佐神宮の本殿の建て直しに伴う遷座祭(せんざさい)*3が、10月には勅祭(ちょくさい)*4があり、大忙しでした。当時私は権禰󠄀宜で、祭務課長だったのですが、その頃から「宇佐にはたくさんの特産物があるのに、どうしてお供えもの、お下がり*5を地産地消でやらないんだろう」という想いがあったんです。今では宇佐市長洲産の勝ちえび*6が縁起物として親しまれたり、地元産の宇佐飴を七五三の千歳飴にするなどしています。宇佐市産のぶどうを使ったワインというのも、そのように地域との結びつきによってお供えものになる「地産地消」のひとつです。*3 遷座祭:神殿修繕の際に御神体を別の社殿に移し、修繕が終わった後に元の神殿に戻す祭典。
*4 勅祭:天皇の勅使(使者)が派遣されて執行される神社の祭典。宇佐神宮では10年ごとに斎行され、臨時奉幣祭ともいう。
*5 お下がり:神様にお供えしたものを神前からお下げし、分けていただくもの。
*6 勝ちえび:豊前海で水揚げされた赤エビを干した、宇佐の伝統的な特産物。昔はエビの殻を取り除く際に「かちかち」と棒で叩いていたため「かちえび」と呼ばれ、勝負事の縁起物として「勝ちえび」と書くようになった。

宇佐神宮 権宮司 大久保博範さん(右)と安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二
宇佐神宮上宮勅使門(2025年1月現在。普段は工事囲いで覆われている)。勅祭記念事業の一環として改修工事中で、2025年春に完成予定(画像提供:宇佐神宮)宇佐神宮上宮勅使門(2025年1月現在。普段は工事囲いで覆われている)。勅祭記念事業の一環として改修工事中で、2025年春に完成予定(画像提供:宇佐神宮)

もともと、三和酒類さんの日本酒・和香牡丹(わかぼたん)をお神酒(みき)にしていたのですが、ワインは、三和酒類元社長の故・西太一郎さんとのお話のなかで思いつきました。私は2016(平成28)年に宇佐ライオンズクラブに、その翌年には西さんが会長を務めていた宇佐市観光協会にも入れていただいたのですが、そうした場で、西さんとお話しする機会がありました。

ある時、「西先生は日本酒と焼酎、どちらがお好きなんですか?」とお聞きしたんです。そしたら意外にも「自分はワインが好きだ」とおっしゃるんですよ。私は東京出身で、大学卒業後京都へ移り石清水八幡宮に28年間いたものですから、その時は山梨や丹波のワインは知っていたのですが、安心院ワインのことは存じ上げていませんでした。

宇佐神宮 権宮司 大久保博範さん
 宇佐神宮の境内には、地元の日本酒蔵の菰樽(こもだる)と共に、焼酎の一斗瓶(いっとびん)も並べられている。三和酒類も日本酒「和香牡丹」と本格麦焼酎「いいちこ」、大分麦焼酎®「西の星」を奉納 宇佐神宮の境内には、地元の日本酒蔵の菰樽(こもだる)と共に、焼酎の一斗瓶(いっとびん)も並べられている。三和酒類も日本酒「和香牡丹」と本格麦焼酎「いいちこ」、大分麦焼酎®「西の星」を奉納

調べてみると2016年の日露首脳会談でふるまわれたワインのなかにも「安心院 スパークリングワイン」があったことを知りまして。だったら「安心院ワインをお神酒にどうでしょうか?」と話したところ、ものの見事に断られました。というのも、安心院町産のぶどうだけでつくっているため、そんなに量がつくれないということでした。その時は「そうですか」と納得したのですが、ワインというのはずっと頭にあったんです。

古屋さんと最初にお会いしたのは2021(令和3)年だったと思います。その時、古屋さんにも安心院ワインを奉納していただく提案をしたのですが、あまりいいお返事はいただけず、でしたよね。

宇佐神宮 権宮司 大久保博範さん、安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二対談

古屋 はい。西が言ったように、安心院ワインは生産量があまり多くはない状態の中で安定して供給していかなければなりません。また地名の入った安心院ワインとして売っているので、プライベートブランド商品というのはほとんどお受けしていなかったということもありまして。せっかくお話しいただいても少し引き気味だったのには、そういった経緯があったんです。

大久保 そうなのですね。そして西さんが2022(令和4)年1月にお亡くなりになり、その次に古屋さんとお会いしたのが、その年の5月でしたよね。その際、改めて「勅祭の記念事業の記念品としてのワインなので、量はそんなに必要ないんで」とお話ししたところ、「実は宇佐神宮の境内から野生ぶどう(エビヅル)の花粉を採って、それを使って10年ぐらい前から品種改良をしていて、それがちょうど収穫できるくらい成長している」とおっしゃるんですよ。もう、「これだ!」と思いました。「境内から勝手に採っていったんですか?」とは思いましたけれど(笑)。

古屋 はい、そうでしたね(笑)。

大久保 しかも境内のどこから採っていかれたのかお聞きしたところ、大尾(おおお)神社*7とおっしゃるじゃないですか。大尾神社はどういった場所かご存じですか?*7 大尾神社:宇佐神宮の東側にある大尾山(おおおやま)に鎮座する神社。八幡大神の御分霊が祀られる。同じ境内ではあるが一之御殿からは歩いて10分程の距離にありやや離れている。

古屋 我々としては、宇佐神宮とゆかりのある地でエビヅルがないかと探し、行き着いた場所でした。宇佐神宮さんの敷地内だとは知っていましたが、由緒などはあまり詳しく存じ上げていません。

大尾神社(画像提供:宇佐神宮)大尾神社(画像提供:宇佐神宮)

大久保 769年に、和気清麻呂(わけのきよまろ)公が第48代称徳(しょうとく)天皇の勅命により勅使として参向し、八幡大神様より、弓削道鏡(ゆげのどうきょう)の野望を打ち砕き天皇家をお守りする、皇統護持(こうとうごじ)の御託宣(ごたくせん。神様のお告げのこと)を受けた場所なんです。これが「宇佐八幡宮神託事件」です。八幡大神様は1300年前の725年に一之御殿にお鎮まりになるのですが、749年に皆さんがよくご存じの奈良の大仏さんを見に行かれます。そして宇佐に戻ってくるのですが、厭魅(えんみ)事件*8という事件のせいで、「こんなけがれたところに住んでいられない」ということで、大尾山にご本殿を建て、767年から782年まで鎮座されました。それが大尾神社です。その間に和気清麻呂公がやってきたんです。

このような由緒正しきところの境内の野生ぶどうを採っていかれた、と(笑)。そして今年、令和7年、八幡さん御鎮座1300年と勅祭が重なり、天皇陛下からの勅使が来られます。これは本当に西先生のご縁なのかなと思った次第です。*8 厭魅(えんみ)事件: 754年、八幡大神が不在の宇佐神宮で、大神田麻呂(おおがのたまろ)と大神杜女(おおがのもりめ)が呪いにより人を殺そうとした事件。続日本紀(しょくにほんぎ)に記載あり。

古屋 そのような由緒正しき場所だったとは、今初めて知りました。本当にご縁ですね。

宇佐神宮 権宮司 大久保博範さん

大久保 ちなみにエビヅルが最初に言葉として記されたのは古事記です。イザナギノミコトとイザナミノミコトの国生みの後、イザナミは火の神を生んでやけどを負いお亡くなりになります。イザナギは黄泉(よみ)の国までイザナミを迎えに行くのですが、変わり果てたイザナミの姿を見てイザナギは逃げ出すんですね。イザナミはそんなイザナギに怒り、黄泉の国の鬼に命じて後を追わせます。イザナギは自分が持っていた「カヅラ」を投げつけて、鬼たちがそれを食べている間に逃げきりました。これがエビカヅラ、別名エビヅルというぶどうです。

古屋 なんと、古事記に書かれるぐらい古来のぶどうだったとは。私が約10年前にエビヅルと既存品種を掛け合わせて新種を開発するプロジェクトに関わり始めた頃には、エビヅルという言葉さえ知りませんでした。

ぶどうの木の芽吹き、収穫、仕込みなどの節目に祭典を斎行

――ご縁と巡り合わせがあっての今回の宇佐神宮限定ワイン生産プロジェクトなのですね。それでは、このプロジェクトの流れについて教えてください。

大久保 話を始めたのが2022(令和4)年5月です。

古屋 ぶどう畑が動き始めるのが春先ですから、翌2023(令和5)年の芽吹きの頃にお祓いをしましたよね。

大久保 4月12日に栽培祈願祭もしましたね。勅祭記念品ということで、神様への願いを込めながらつくっていきます。日本酒の時はそのようなお祭りをするのですが、ワインではやったことがなかったです。実がなる前の畑で行いました。その年の9月6日には「勅祭記念事業葡萄酒収穫・醸造祭」として、巫女がぶどうを収穫し、その後、工場内で仕込み、樽詰めへと続くワイン醸造の無事と無事故安全を祈願しました。

  • 栽培祈願祭(画像提供:宇佐神宮)栽培祈願祭(画像提供:宇佐神宮)
  • 「勅祭記念事業葡萄酒収穫・醸造祭」での収穫(画像提供:宇佐神宮)「勅祭記念事業葡萄酒収穫・醸造祭」での収穫(画像提供:宇佐神宮)
  • 「樽出祈願祭」で奉奏された舞(画像提供:宇佐神宮)「樽出祈願祭」で奉奏された舞(画像提供:宇佐神宮)

古屋 そして収穫したぶどうでワインの醸造を始めました。2023年末に樽に入り、熟成を重ねて2024(令和6)年11月14日に樽から出して瓶に移し替える「樽出祈願祭」を行いました。

大久保 その時も巫女さんにひと舞してもらいましたね。

古屋 とても幻想的でしたね。シーンとした樽貯蔵庫の中で巫女さんが舞っておられて。

大久保 斎主の祝詞(のりと)もエコーが利いてよく響いていましたね。

古屋 ボトリングしてからまた少し寝かせて、夏前にラベルを貼り、10月の勅祭までにお納めするというスケジュールです。

山ぶどう系特有の酸味もありながら、深みも味わいもしっかり

――樽出しの時点での出来具合はいかがだったでしょうか。

古屋 とても健全に出来ています。

ワインの製造段階には微生物による汚染、酸化などのリスクがあります。酸化してしまうと果実味がなくなって、まったく美味しくないワインになってしまうことも。使用するぶどうが少量であればあるほど、こうしたリスクが高まり、気を遣う項目が増えるんですよ。なおかつ今回使用した品種は酸を少し落とし気味につくり上げたぶどうで、樽貯蔵の段階での汚染のリスクが非常に高かったんです。

しかも今回は納品先と納期が決まっているワインですから、「失敗してもリカバリーすればいい」という考えは通用しません。実はかなりのプレッシャーでして、もちろん技術的には間違いが起きるようなことがないのは分かっているんですが、製造管理のメンバーには「蓋を開けた時に何かあるというような状態には絶対になるなよ」と常々言って、気を引き締めてもらっていました。なんといっても本当に少量で、ワインは樽2つ分しかないものですから。

安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二

大久保 そのようなプレッシャーのなかでつくっておられたとは知りませんでした。

古屋 樽出しの段階でテイスティングをしてみて、赤紫色を帯びたとてもクリーンな状態で仕上がっているのは見て分かりました。エビヅルの他にも山ぶどう系の品種をいくつか交配させた品種が混ざっているのですが、少し青っぽい品種もあれば、果実感のある品種もあって、その味わいが複雑にからんでいます。香りに関しては、樽から出してすぐは青っぽい香り、ピーマンみたいな青さが先に立ち上がるのですが、樽から瓶へ移す際に空気に触れ、瓶で貯蔵している間に熟成が進むと、また新たな果実の香りが出てくると思います。

樽出しの段階で古屋がテイスティングしたワイン(写真:三和酒類)樽出しの段階で古屋がテイスティングしたワイン(写真:三和酒類)

実はみなさん、ワインを飲む時は液体を飲んでいるつもりで香りを飲んでいるんですよ。ワイングラスっておおぶりじゃないですか。それは香りをグラスの中にためて、液体とグラスの中に漂っている空気を一緒に飲むためなんです。よく鼻をつまんで飲むと何を飲んでいるのか分からないと言いますが、ワインの味を左右するのは香りが7、8割だと思います。

大久保 そうなんですね。今お話を聞いて驚くことばかりです。私はワインづくりのことは何も分からないですし、樽出しの神事の際も、皆さんの真似をしてワイングラスをくるくる回していただけなので(笑)。私たちは神様にお供えするまでは決して口にすることはできませんしね。

宇佐神宮 権宮司 大久保博範さん、安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二対談

古屋 私はてっきり大久保さんはものすごいワイン好きなのかと思っていました。

大久保 そうですよね、三和酒類さんには8年越しで「ワインを」と言ってきましたから。今回、いろいろと勉強して、「ワインって水を一切使わないんだな」と知ったぐらいですから。

古屋 つくりの段階では水は使いませんが、ぶどうが生育する上では水も必要ですよ。

大久保 なるほど。ところで最終的にはどのような味わいのワインになりそうですか。

古屋 山ぶどう系特有の酸味もありながら、深みも味わいもしっかりしてくると思います。香りはブルーベリー、もう少し瓶の中で空気と触れ合うとプラムとかそういった香りが強まってくると思います。さっき言ったピーマンのような青さは豆のような少し落ち着いた香りに下がっていくので、それと樽のニュアンスがうまく混ざっていけば、非常に良くなると思います。いろんな味わいを感じるワインになるのではないでしょうか。

大久保 それは楽しみですね。といってもお配りできるのはハーフボトルで限定700本ですから、御奉賛いただいた方々などにお下がりとしてお配りすれば、あっという間になくなってしまうと思います。私の口に入るかどうかも分かりません。今回、マスコミの他たくさんの方からお問い合わせをいただいたのですが、本当に数が少ないので、ご理解いただければと思います。こんなにまでも注目していただけるのは、勅祭、御鎮座1300年であること、しかも(日本酒ではなく)ワインという珍しさもあってのことだと思っています。

古屋 そのような大切な記念行事の記念品にワインを採用するということに、神社内での反対意見などはなかったのでしょうか。

大久保 まったくありません。安心院ワインの知名度は相当なものですから。それに、八幡さんはとても先進的な神様なんです。神像となって初めて人前に姿を現した神様ですし、最初にお神輿(みこし)に乗ったのも八幡さんです。そして宇佐神宮は神道と仏教が交わる神仏習合発祥の神社。このような先進的な八幡さんですから、ワインはよく合うのではないでしょうか。

古屋 なるほど!

宇佐神宮 権宮司 大久保博範さん、安心院葡萄酒工房 工房長 古屋浩二対談
大久保博範(おおくぼ・ひろのり)宇佐神宮 公式サイト
http://www.usajinguu.com/

PROFILE

大久保博範(おおくぼ・ひろのり)

宇佐神宮 権宮司 総務部長兼祭務部長
1964年、東京都出身。国学院大学卒業後、京都の石清水八幡宮に奉職し、三勅祭(石清水祭、賀茂祭〔葵祭〕、奈良・春日大社の春日祭)である石清水祭の祭務を担当。2015年、宇佐神宮に転任し、本殿の遷座祭、勅祭の祭務に携わる。お酒はたしなむ程度。

古屋浩二(ふるや・こうじ)

PROFILE

古屋浩二(ふるや・こうじ)

三和酒類株式会社 執行役員 安心院葡萄酒工房 工房長/ヴィンヤードマネージャー
農業法人 株式会社石和田産業 社長、一般社団法人葡萄酒技術研究会認定 ワイン醸造技術管理士
1971年、福岡県古賀市生まれ。九州工業大学情報工学部生物化学システム工学科卒業、1994年、三和酒類入社。米国留学を経て2001年の安心院葡萄酒工房立ち上げを担当。自社農園におけるワイン専用品種栽培、品種開発にも取り組む。2021年からワインのほかに日本酒、クラフトビールといった三和酒類の醸造酒分野を担当。プライベートでワインを飲む時もテイスティング記録をスマホのアプリに保存。麦焼酎は炭酸水で割ってさっぱりと飲む派。