クリエイトコーヒーラボ店主 椎原渉さん

大分に暮らすということ 第15回ルワンダで得た“グローカル”な視点で、コーヒーを軸に
地域課題解決に貢献したい

「クリエイトコーヒーラボ」店主椎原 渉

大分市花高松で挽き売りコーヒー専門店「クリエイトコーヒーラボ」を営む椎原渉(しいはら・わたる)さんは、コーヒーの抽出技術を競う「コーヒーブルーイングトーナメントジャパン2023」で日本一に輝いた凄腕コーヒー職人です。中国の大学へ進学、帰国して別府市のコーヒー関連総合メーカーに就職し、その後、JICA海外協力隊の“コーヒー隊員”としてアフリカ・ルワンダへ渡ります。「コーヒー」を軸にグローカルな視点でさまざまな地域貢献活動も行う椎原さん。その多彩な活動の原動力や今後の目標などについてお聞きしました。
文:青柳直子 / 写真:三井公一

大分商業高校から中国の厦門大学へ進学。海外留学生と一緒に東南アジア一周の旅へ

――大分県立大分商業高等学校を卒業後、中国の厦門(アモイ)大学に進学し、経営学を専攻されたそうですね。

はい。父親が貿易業を営んでいて、中国によく行っているのですが、僕が高校3年生の時、中国福建省のある物産展示会に連れて行ってくれたんです。もう、その規模の大きさにびっくりしましたね。車も衣料品もなんでもあるし、すごく活気があって。初めての海外旅行でしたが、すごく楽しい国だな、という印象を受けました。

帰国して進路を決めることになり、僕自身は就職するつもりでいたのですが、父が大学に行った方がいいと。それなら国内の大学ではなく、経済的に勢いがあって、僕にとってイメージも良かった中国に語学留学しようと決めました。当初は1年で帰国するつもりでしたが、中国語検定のHSKに合格すれば本科に編入できることが分かったので、2年間頑張って中国語(北京語)を学び、厦門大学の経済学部国際経済貿易学科の3年次に編入しました。

国際経済貿易学科は留学生対象の学科なので、東南アジア各国のほか、ロシアやアフリカからも留学生が来ています。世界各国から来た同級生と共に学んだことは大きな経験でした。福建省南部にある厦門市は温暖な気候で、日本人も多く住んでいる国際都市なので、いわゆる日本人バッシングみたいなことはほとんどなかったですよ。

クリエイトコーヒーラボ店主 椎原渉さん

在学中はアメリカ人、スイス人、スウェーデン人の同級生と東南アジアを一周しました。厦門からバックパッカーの聖地・タイのカオサンロードに入り、マレーシア、ラオス、カンボジアなど。アメリカ人と一緒にベトナムの戦争博物館にも行きました。少々危ない目にもあいましたが(笑)、やっぱり海外はいいなあと思いましたね。僕、英語は全然話せないのですが、東南アジアは中国語が通じる国がけっこうあるので、困ることはなかったですね。

ひとつ心残りなのは、その当時はコーヒーに興味がなかったということです。タイ、ベトナム、ラオスはコーヒーの生産に力を入れていますし、中国も雲南省産のコーヒーが今すごくいいんですよ。厦門もコーヒーを飲む文化が根付いていますし。その頃からコーヒーに興味があれば、行先や見方も違っていたのかなと思います。

クリエイトコーヒーラボ店主 椎原渉さん

別府のコーヒー関連総合メーカーでコーヒーの世界に目覚める

――大学時代はコーヒーに興味がなかったとのことですが、中国から帰国後、コーヒー関連用品の総合メーカー・株式会社三洋産業に入社します。

とにかく中国語を活かした仕事をしたいと思って。三洋産業は今では世界中に代理店がありますが、当時は中国だけでした。お茶文化の国ではありますが、コーヒーの需要増加を見込んでいました。大学は夏卒業でしたので、9月の面接で「中国の展示会に行ってほしい」と言われて入社を決め、12月には社長と一緒に海外出張に行ってましたね。中国語が活かせるし、社長の話は面白いし、当時はペーパーフィルターの工場が建て替わった頃で。「こんないい会社が別府にあったんや」って。いいご縁をいただきました。

三洋産業の社長はハンドドリップコーヒーに思い入れが強くて、入社当時、「これで勉強しなさい」って、社長がペンで丸い線を描いたドリッパー器具を渡されて。午前中はひたすら水でその線をなぞってドリップの練習をしていたんですけど、社長が見に来る頃にはもう目がかすんで手がぶれるんですよ。そしたら「下手だな」って(笑)。でもそこからですね、本気でコーヒーに興味を持つようになったのは。

焙煎(ばいせん)、ペーパー工場、ドリップバッグを作る充填(じゅうてん)と、いろいろな部署で研修を受けさせていただきました。

豆の産地に行けるJICAの“コーヒー隊員”に合格。研修でコーヒーの栽培に関する知識を得る

――その後、JICA(独立行政法人国際協力機構)海外協力隊の「青年海外協力隊員」としてアフリカのルワンダに行かれたとのことですが、どのような経緯だったのでしょうか。

三洋産業で焙煎の研修を受けていた頃のことです。世界各国からコーヒー豆が届くのですが、トウモロコシが入っていたり、中には鳥の骨が混ざっていたり。「いったいどこで作りよんかな」って産地に興味を持つようになったんです。

いろいろ調べるうちに、コーヒーの産地で活動するJICA海外協力隊員のブログを見つけました。コーヒーの産地に行ってみたいけれど、1人で行くのは難しいだろうと思っていたので、これはいい機会だと思いました。だから最初から国際協力に興味があった訳ではないんです。

英語に関しては商業高校時代に取った商業英検(全商英検)3級しか持ってなかったのですが、その時すでに「コーヒーマイスター」の資格も取っていましたし、書類選考はパスして面接に挑みました。そしたら案の定、英語力についてはすごく聞かれたので「猛勉強中です」と(笑)。

ただコーヒーに関しては、資格だけではなく全国のコーヒーショップも回っていたので、「コーヒーの知識に関しては自信あります」とアピールして、「最後に一言ありますか?」と聞かれた時、「他の人を行かせるなら僕を行かせた方がいいと思います」と言いました。そしたら合格しました。それで、三洋産業からは退職することになります。働いたのはぴったり3年間ですね。社長は「コーヒー業界に深く入ろうというのはいいことだ」と快く送り出してくれました。

クリエイトコーヒーラボ店主 椎原渉さん

――強気の勝利ですね。研修はどのようなものでしたか。

僕が合格した時のコーヒー隊員の産地赴任先はルワンダだけで、「コーヒーの栽培知識と味についての知識を広める」という活動内容でした。僕はコーヒーの知識があるといっても農業経験はなかったので、コーヒーハンターとして有名な川島良彰(かわしま・よしあき)さんの会社「ミカフェート」で研修を受けさせてもらいました。

英語をはじめ、安全対策などの研修は福島県でみっちり70日間。日本語禁止だったので、なんとか少しは話せるようになりました。同期はみんな英語ペラペラで、親切に僕に教えてくれるんですよ。やっぱりボランティア精神のある人たちだなと思いました。

三洋産業時代、中塚茂次社長と訪れた中国にて三洋産業時代、中塚茂次社長と訪れた中国にて

ルワンダでは内戦・大量虐殺の爪痕の大きさを痛感させられる経験も

――コーヒーの産地としてはすでに有名なルワンダで栽培知識を広める、とはどういうことなのでしょうか。

ルワンダは元々ベルギー領で、コーヒーの栽培は植民地時代に始まりました。ですから元来、コーヒーを飲む文化はないですし、僕が行った頃も国内消費はほぼなかったですね。つまりルワンダの人たちにとってコーヒーは外貨を得るために栽培するものでしかない。

さらに個人農家が多いので、栽培の知識にばらつきがあるんですよ。研修を受けたとはいえ僕自身の農業経験は浅いので、農家さんを1軒1軒回って問題点を洗い出し、土壌などの専門家につなぐ役割を果たすための派遣なのだと解釈して活動していました。

――ルワンダ滞在中、印象深かったことを教えてください。

ご存じの通り、ルワンダでは民族対立から起こった内戦(1990~1994年)があり、1994年4月にはフツ族によるツチ族に対する大量虐殺がありました。その後、国を挙げて初等教育から平和学を取り入れているので、穏やかな人が多く、すごく周囲の人に気を遣ってくれるんですよ。

JICA海外協力隊で活動したルワンダにて

僕が淹れたコーヒーをめちゃくちゃまずそうな顔をしながら「美味しい」って言ってくれたり。日本人好みの苦みがあるコーヒーはルワンダの人にとっては苦すぎるようでした。また「お金ちょうだい」って言って寄ってくる子どもたちも、本当に僕がお金を持っていないのが分かると「のどかわいてるだろ」って逆にお金を貸してくれたり(笑)。

普段はそんな感じなんですけど、毎年4月に行われるジェノサイド追悼週間にはやはり虐殺のトラウマがフラッシュバックする方もいて。内戦の爪痕は大きいなと感じました。僕が派遣された村の村長さんは70代だったのですが、10人以上子どもがいて。「全員オレの子どもだ」って言うんですけど、孤児たちを引き取っているんですよね。その子たちをみな学校に行かせていて、めちゃくちゃかっこいい尊敬できる人でしたね。

現地の豆を日本の焙煎機で焼いて販売。1日に100杯も売れる盛況ぶり

――ルワンダでの活動で、一番貢献できたと思うのはどのようなことですか。

バスの停留所にある「道の駅」みたいな場所で、村で収穫したコーヒー豆を日本製の焙煎機で焼いて、1杯100円くらいの値段で販売したことがあるんですよ。そうしたら、観光客や首都のお金持ちたちがたくさん買ってくれて、1日100杯くらい売れました。ルワンダのコーヒー豆の収穫は1年に1度で、各農家が持っている木の本数が少ない上に、買いたたかれることも多いので、現地の人が収穫した実を直接売れる場所、という意味では意義はあったと思います。

心残りなのはモデルファームのことですね。栽培方法を指導するにも限界があったので、自分で畑を借りて、苗木を植えて、コーヒー栽培に必要な窒素を土壌に固定できるようにマメ科の植物を植えて。「こうしたらうまくできるよ」というモデルとなる畑を造って見せたかったのですが、任期中に結果が出るものではありませんでした。しかもコロナが始まってしまい、2年の任期を全うできず、1年半で帰国せざるを得なくなってしまって。あの畑はどうなっているのか、いつか見に行きたいと思ってはいます。

JICA海外協力隊で活動したルワンダにて

ルワンダで得たものを還元したい。 大分でコーヒーショップを開店し、地域課題解決に貢献する活動も

――コロナ禍による強制帰国だったのですね。その後、2022年5月、大分市花高松に挽き売りコーヒー専門店「クリエイトコーヒーラボ」を開店されました。

2020年3月に帰国してすぐはまだ待機期間だったので、知り合いの陶芸家のところに行ったり、三洋産業の社長に相談してスリランカ料理店でコーヒーを売ってみたりしていました。しかし、コロナの収束が見えない状況が続いたので、それならばもう自分で豆売りをしようと思って、焙煎機を買いました。

「JICAで語学訓練をしてもらい、ルワンダにも行かせてもらったので、その分還元しないといけない」と思い、単に豆を売るだけではなく、ルワンダでの体験などコーヒーの根っこの部分を直接お客さんにお話ししたいと考えました。そこで、スーパーの前という人通りの多い場所で対面販売を始めました。お店のシンボルマークのモチーフをルワンダに伝わる牛糞アート「イミゴンゴ」にしたのもそういった思いからです。

クリエイトコーヒーラボ店主 椎原渉さんクリエイトコーヒーラボでは、豆の販売のほか、椎原さんがその場で淹れたコーヒーのテイクアウト販売も行っている
  • クリエイトコーヒーラボの店頭で販売中の豆は全種類試飲が可能
  • お店のロゴマークの元になったルワンダの牛糞アート「イミゴンゴ」
(左)販売中の豆は全種類試飲が可能。対面販売の形をとることで、お客様との対話を通して、好みに合った豆を提供する
(右)お店のロゴマークの元になったルワンダの牛糞アート「イミゴンゴ」。木の板に子牛の糞と灰をこねた粘土状の素材を手で乗せていき、立体的な幾何学模様を描く伝統工芸
(上)販売中の豆は全種類試飲が可能。対面販売の形をとることで、お客様との対話を通して、好みに合った豆を提供する
(下)お店のロゴマークの元になったルワンダの牛糞アート「イミゴンゴ」。木の板に子牛の糞と灰をこねた粘土状の素材を手で乗せていき、立体的な幾何学模様を描く伝統工芸

――「グローカル」(地球規模で物事を考えつつ、地域の実情に配慮して行動する)をモットーにさまざまな活動をされているのも、JICA青年海外協力隊での経験の影響が大きいのでしょうか。

そうですね。対面販売に関しては先ほども言ったようにコーヒー文化、産地についての理解を広めるための草の根活動といったところでしょうか。ほかには子ども食堂でキッズバリスタ体験会を催したり、老人ホームで出張バリスタをしたり。おじいちゃんが泣いて喜んでくれたりもして、僕も本当にうれしいですね。

発達障害の子の親御さん向けにコーヒー教室もしています。「支援」を前面に打ち出すのではなく、「コーヒー教室」とすることで、気軽に集まれる居場所になればいいなと思って。それから、大分市立エスペランサ・コレジオという生涯学習施設で「美味しいコーヒー」という講座を毎週行っています。あと、母校である大分商業高校の商業調査部という部活とコラボして、商品を作ったり、由布院の旅館でコーヒーを淹れたり、といった活動もしています。

2023年12月、大分市内の公民館で行われた女性のための講座「アクティブレディ」に、コーヒー教室の講師として参加
2023年12月、大分市内の公民館で行われた女性のための講座「アクティブレディ」に、コーヒー教室の講師として参加
2023年12月、大分市内の公民館で行われた女性のための講座「アクティブレディ」に、コーヒー教室の講師として参加
大分商業高校の同窓会で商業調査部の在校生たちとドリップバッグを協同制作
JICA海外協力隊員OBとして出店した、佐賀県佐賀市のSAGAN COFFEE FESTA
(左)母校である大分商業高校の商業調査部の部員たちと協同でオリジナルのドリップバッグを製作し、同校同窓会で販売した。
(右)JICA海外協力隊員OBとして出店した、佐賀県佐賀市のSAGAN COFFEE FESTA。
クリエイトコーヒーラボは大分市内で営業する地域密着型の店舗を目指しているが、いっぽうで椎原さん自身によるコーヒーの啓蒙活動は市外、県外へと幅を広げている
(上)母校である大分商業高校の商業調査部の部員たちと協同でオリジナルのドリップバッグを製作し、同校同窓会で販売した。
(下)JICA海外協力隊員OBとして出店した、佐賀県佐賀市のSAGAN COFFEE FESTA。
クリエイトコーヒーラボは大分市内で営業する地域密着型の店舗を目指しているが、いっぽうで椎原さん自身によるコーヒーの啓蒙活動は市外、県外へと幅を広げている

国際基準の超難関生豆鑑定士資格を取得。コーヒーの抽出技術を競う大会で日本一に輝く

――コーヒーを軸に地域に貢献するさまざまな活動を展開されているのですね。さらにコーヒー評価技能の国際資格「Qアラビカグレーダー」*1も取得されたと聞きました。

はい。簡単に言うと生豆の鑑定士の資格ですね。国際基準に則って味を評価するということは、適正な価格をつけることにつながるので、今後、産地に行って生産者と価格をすり合わせる際、「何点だからいくらだよね」と言えるようにと思って取りました。*1 Qアラビカグレーダー:正式にはLicensed Q Arabica Grader。スペシャルティコーヒー協会が定めた基準・手順に則って、コーヒーの評価ができると認定された技能者。コーヒーに関する一般知識を問う筆記試験、味覚・嗅覚の審査、コーヒーの香りと味を評価するためのカッピングの技能実習試験など、6日間で研修を含めた8科目19試験を受ける。

日本一を勝ち取った「コーヒーブルーイングトーナメントジャパン2023」日本一を勝ち取った「コーヒーブルーイングトーナメントジャパン2023」

――世界のコーヒー従事者の0.016%しか合格できない難関資格だそうですが、どのような対策をされたのでしょうか。

試験と研修がセットなのですが、研修だけでは合格は難しいと思ったので、アロマキットを使った嗅覚の訓練、あとは飲んだコーヒーを「ナッツの香り」などといった具合に、言語化して記憶することを習慣にしました。言葉で表現するフレーバーの数が多いほどコーヒーの点数は高くなるので、ボキャブラリーを増やすことは大切ですね。

――さらに2023年3月には、コーヒーの抽出技術を競う「コーヒーブルーイングトーナメントジャパン2023」で日本一に輝きました。

この大会はエスプレッソマシン以外、どんな抽出器具を使ってもいいのですが、三洋産業の器具を使って優勝したかったので、社長にみっちり仕込まれたハンドドリップに自分の経験をプラスして挑戦しました。この大会に関しては特別な準備はせず、「いつも通り」で臨みました。タイトル獲得を社長に報告したら、「よくやった」と喜んでくださって。少しは恩返しできたかなと思っています。

――お店の経営に地域活動に資格勉強に大会出場。目が回るような忙しさですね。

そうですね(笑)。ルワンダに行って、積極性をもって自分から動かないと何も物事が進まないということを痛感したので、したいと思ったことはすぐに行動に移すことにしています。三洋産業時代の同僚が、今僕のもとに来てくれて、僕の「したい」を全部きっちり調べてサポートしてくれているので、本当に助かっています。

コーヒーにとって発酵はなくてはならないもの。日々進化する発酵方法によってさまざまなフレーバーが誕生

――ところでコーヒーと発酵にはどのような関係がありますか。

コーヒーにとって発酵は大事ですよね。収穫した生豆をそのまま焼いて飲んでも全然、味がしないんですよ。発酵の過程でコーヒーのよい香りや味が出てくるのですが、その発酵方法もどんどん進化しています。例えば「カーボニック」は二酸化炭素を入れて発酵時間を変える手法です。

ルワンダで今取り組んでいるのは、コーヒーチェリー(コーヒーの実)を果肉が付いたまま樽に入れて、完全に蓋(ふた)をして72時間、嫌気性発酵させる手法です。種(コーヒー豆)に果肉の成分が移ってワインのような味わいになるんですよ。日本国内でも長野県松本市のアルプスコーヒーラボさんが、発酵前の生豆をお酒に漬けて風味を移すということをされています。

精製方法についても、豆の果肉を剥いて洗うのが「ウォッシュド」、果肉を付けたまま天日干ししたものを「ナチュラル」と言いますが、この2つの発展形がいくつもあるので、精製方法に発酵方法を加えると、コーヒーの加工法はもう無限大ですね。

クリエイトコーヒーラボ店主 椎原渉さんお店の事務所がある建物の1階は、現在は倉庫として使っているが、いつかは豆を焙煎するための機械を入れるなど、スペースの有効利用を構想中

――生豆をお酒に漬けるコーヒーもあるのですね。ところで椎原さんは普段、お酒は飲まれますか。

好きですね。“飲み事”で仲良くなることが多いですしね。ハイボールをよく飲みます。焼酎なら麦ですね。コーヒーを「ウイスキーの味、香り」と表現することもありますし、評価方法もワインの手法を追随しているので、コーヒーとお酒は通ずる部分が多いと思います。

――それでは椎原さんの今後の目標についてお聞かせください。

Qグレーダーの資格ですが、現在取得しているのはアラビカ種に関する資格なので、次はロブスタ種*2の「Qロブスタグレーダー」の資格も取りたいと思っています。それから、ある方からチャンスをいただいて、2024年4月に、大分市中島中央でカフェスペースを併設した2店舗目を開店することになりました。また、2024年夏ごろに開催予定の「東京ジャパンカップテイスターズチャンピオンシップ」にも出場するつもりです。この大会は3つのコーヒーの中から1つだけ違うものを当てるという、正解不正解がはっきりした味に関する大会なので、一番フェアな気がするんですよね。

将来的にはコーヒーショップ1軒1軒に小ロットで対応できるようなコーヒー製造業ができたらいいなと思っています。*2 アラビカ種、ロブスタ種:現在、商業用に栽培されているコーヒー豆は主にこの2種。アラビカ種はエチオピア原産で、アフリカ・南米・アジアなど世界中で最も多く栽培されている。ロブスタ種はビクトリア湖周辺から西アフリカを原産地とし、低地で湿潤な土地で栽培されアラビカ種より病害虫に強い。

――最後に大分の魅力を教えてください。

食べ物が美味しくて、人が優しくて、海と山が近いことでしょうか。東京など他地域に出店することも考えたことはあるのですが、やはり地元であるここ大分で、地域に貢献しつつコーヒーを軸にした活動をしていきたいと思っています。

クリエイトコーヒーラボ店主 椎原渉さん
椎原渉(しいはら・わたる)

PROFILE

椎原渉(しいはら・わたる)

1993年、大分市出身。大分商業高等学校時代は野球部に所属。WBC日本代表を務めたプロ野球埼玉西武ライオンズの源田壮亮選手と共にグラウンドで汗を流す。高校卒業後、中国・厦門(アモイ)大学に進学、経営学を学ぶ。帰国後、別府市のコーヒー関連製品メーカー・株式会社三洋産業に就職。3年後の2019年、JICA青年海外協力隊員としてアフリカ・ルワンダでコーヒーの栽培支援に携わる。2021年、国際的なコーヒー鑑定士の資格Licensed Q Arabica Grader(Qアラビカグレーダー)を取得。2022年5月、大分市花高松に挽き売りコーヒー専門店「クリエイトコーヒーラボ」を開店。2023年3月、コーヒーの抽出技術を競う「コーヒーブルーイングトーナメントジャパン2023」で日本一に輝く。「グローカル」をモットーに地域貢献活動にも尽力している。