CHOMPOOシェフ・料理家森枝 幹
料理家のリレー連載「はじめての発酵食レシピ」。今回から海外と日本での修業経験をもち、さまざまな味に精通する森枝幹(もりえだ・かん)さんにご登場いただきます。現在、森枝さんは東京・渋谷PARCO(パルコ)にあるタイ料理店「CHOMPOO(チョンプー)」のシェフとして腕をふるう毎日。今回はタイ料理に欠かせない発酵調味料・オイスターソースを使ったレシピを教えていただきました。
料理:森枝幹 / 構成:森綾 / 写真:小林みのる
2019年11月、東京・渋谷パルコに「CHOMPOO」をオープンしました。もともと、タイ料理には興味があってタイ各地に何度も行っていました。とても奥深くて飽きません。先日も、食のイベント「FOODEX(フーデックス)JAPAN」*1の会場で、タイの魚醤(ぎょしょう)*2製造・輸出では老舗メーカーのナンプラーを紹介しました。プレミアム・ナンプラーでかなり美味しいです。
おっと、今日はナンプラーの話じゃなくて、オイスターソースでした(笑)。
タイの発酵食品は本当に種類がたくさんあって、オイスターソースやナンプラーにも発酵工程の違い、メーカーによる味の違いがあるので、料理をする人は、用途に応じて使い分けるんですよね。*1 FOODEX JAPAN:1976年から日本国内で毎年開催されるアジア最大級の食品・飲料の国際展示会。
*2 魚醤:魚介類と塩を漬け込んで発酵させた醤油状の調味料。
オイスターソースは中国が発祥と言われていますが、ナンプラーと並んでタイ料理でも欠かさず使われる調味料です。一度、オイスターソースを自作してみたことがあるのですが、牡蠣(かき)の量がめちゃくちゃ必要で、発酵させるプロセスも難しいことが分かりました。ある一定の塩分濃度が必要だし、おそらく家庭でつくるのはかなり難しいと思います。市販のものでも十分美味しいので、今日は手に入りやすいものを使って2品作りますね。
オイスターソースが決め手になるのは青菜炒め。今日はタイでもよく食べられている空芯菜(くうしんさい)を使います。春なら菜の花でもいいですね。空芯菜は夏野菜ですが、このところ、通年売っていたりします。唐辛子は、今日は生のものを使いましたが、干したものでもいいし、青唐辛子でもいい。
とにかく大事なことは、強火でやること。IH(電磁調理器)を使う場合でも鍋を熱々にしておいてください。そうしたらもう、青菜と調味液をばっと合わせて完成です。
鶏肉にオイスターソースの風味を絡めて焼くガイヤーン。タイ語の「鶏肉(ガイ)」と「焼く(ヤーン)」という名前のタイの東北地方の料理です。ちょっと焦げた香ばしさがポイントで、タイでは炭火で焼きます。家庭ではオーブンでもいいし、フライパンでじっくり焼いてもいい。
唐揚げ用の皮付きのもも肉でもいいですが、今回は手羽先を使います。やっぱり肉は骨付きが美味しいから。また、部位の違う肉を2種類ぐらい使うと、見た目も楽しいかも。
肉に揉み込むたれに入れるパクチーは、根から上の茎の部分4〜5cmを使います。パクチーは根の方が香りが強く風味が出やすいのが特徴です。しっかりめの味なので、漬けておく時間もそんなには必要ないし、冷めても美味しいですよ。食べるときのつけだれに、タイではバイマックルーというコブミカンの葉を使い、柑橘の爽やかさを足しますが、ゆずなどの柑橘が入った日本の七味も合います。辛さはお好みで。
空芯菜・・・1束
サラダ油・・・大さじ2
〈A〉調味液
にんにく(みじん切り)・・・大さじ1
白胡椒(粉)・・・少々
唐辛子(みじん切り)・・・大さじ1/2
ナンプラー・・・大さじ1/2
オイスターソース・・・大さじ1/2
水・・・100cc
鶏手羽先・・・6本(もも肉なら300g程度)
〈A〉肉に揉み込むたれ
パクチーの根から上の茎の部分4~5cm(粗く刻む)・・・2~3本
白胡椒(粒)・・・小さじ1
にんにく(粗く刻む)・・・1かけ
オイスターソース・・・大さじ1
ナンプラー・・・小さじ1
〈B〉つけだれ(下記の中で好みのもの)
粉唐辛子 or 七味・・・好みの量
ナンプラー・・・大さじ1
ライム or レモン・・・大さじ1
スイートチリソース・・・好みの量
PROFILE
森枝幹(もりえだ・かん)
1986年生まれ。調理師専門学校を卒業後、オーストラリアへ留学。世界のベストレストランの常連「Tetsuya’s」(豪州・シドニー)で料理を学び、帰国後は京料理の「湖月」(東京・表参道)で修業。その後、マンダリン オリエンタル 東京(東京・日本橋)内の「タパス モラキュラーバー」で修業を積み、2011年に独立。東京・下北沢の「Salmon&Trout(サーモン・アンド・トラウト)」(現在閉店中)のシェフとなり人気を博した後、2019年に東京・渋谷PARCOにタイ料理店「CHOMPOO(チョンプー)」をオープン。ほかにフードマガジンの発行や、レストランプロデュース、イベント開催など、従来の料理人の枠にとらわれず活動を続ける。