料理研究家きじまりゅうた
身近な素材をちょっとしたコツで最高の味に仕上げるきじまりゅうたさんのレシピ。家庭的で、お惣菜としてもおつまみとしても楽しめるのが特長です。今回の発酵素材は酢。2種類の酢を使い分け、見た目にもきれいなピクルスと、朝ごはんにもぴったりで簡単にできるシェントゥジャン(台湾風豆乳スープ)のつくり方を教えていただきます。
料理:きじまりゅうた / 構成:森綾 / 写真:小林みのる
一般的な白い酢(米酢、雑穀酢など)のほかに、黒酢、リンゴ酢、ワインビネガーにバルサミコ酢。中国の香酢(こうず)、赤酢。世界中にいろんな酢があります。スーパーでもさまざまな酢が簡単に手に入るようになりました。おおむね、日本の酢は糖質を含む原料を酵母によってアルコール発酵させ、その後、酢酸菌などを加えて酢酸発酵させたもの。
最近は玄米でつくった黒酢を使っている家庭も増えてきているのでは。米酢や雑穀酢といった白い酢の方がつーんとした香り、酸味が強く、これに対して黒い酢は酸味がまろやかで独特の香りがします。りんごなどフルーツでつくった酢や、中国の香酢はさらにまろやかです。
とはいえ、日本の一般的な家庭では黒酢より白い酢のほうが使用頻度が高いでしょう。買ったはいいけれど、黒酢は余りがちな家庭も多いかもしれません。実は酢を複数種類混ぜて使うと風味が複雑になって美味しいんです。
今回のピクルスのレシピでは黒酢をベースに米酢を少しブレンドしました。酸味の強い米酢で味が引き締まります。僕は餃子を食べるとき香酢を使いますが、それだけだと物足りなくて、米酢を混ぜたりもします。ブレンドの美味しさ、楽しさを覚えると、黒酢もさまざまに生かせます。
今回「黒酢ピクルス」には豆を入れたのですが、ちょっと珍しいでしょう。実は僕、とかち観光大使をやっていて、毎年北海道の十勝*に通っているんです。十勝は小豆で有名ですが、豆の生産量がすごいんですよ。生産量1位の北海道のなかで、ほとんどが十勝産の小豆です。*十勝:十勝地域は北海道東部、1市16町2村で構成されている。
それだけに、十勝では豆の食べ方がすごく研究されていて、お土産で豆のピクルスがあるんです。食べてみたらとても美味しい。植物性たんぱく質もしっかり摂れますし、腹持ちもいいので、ダイエットしている人にもいいんじゃないかな。
瓶は100円ショップで売っているものを使いました。煮沸消毒して使ってください。きれいな色の野菜を詰めて、持ち寄りのご飯会などのおもたせにしても喜ばれそうですよ!
もう1品は台湾で人気の朝ごはん「シェントゥジャン(台湾風豆乳スープ)」。あたためた豆乳を酢に注ぐとおぼろ豆腐状に固まるのが面白いスープです。とろとろでまろやか、あたたかいスープで1日を始めましょう。
蒸し大豆かミックスビーンズの缶詰・・・200g
パプリカ(できれば赤と黄色合わせて)・・・1個分
きゅうり・・・1本
大根(先の細い部分)・・・8〜10cm
〈A〉
黒酢・・・100ml
米酢・・・大さじ2
砂糖・・・大さじ5
塩・・・小さじ1
唐辛子(輪切り)・・・2本
黒粒胡椒・・・5〜6粒
無調製豆乳
(できれば大豆固形分10%以上のもの)・・・300ml
細ねぎ・・・2本
ラー油・・・少々
(あれば)油麩・・・好みの量
〈A〉
桜えび・・・小さじ2
かつおぶし・・・2g
味つきザーサイ・・・3枚
〈B〉
黒酢・・・小さじ2
ごま油・・・小さじ1
塩・・・小さじ1/4
黒胡椒・・・少々
PROFILE
きじまりゅうた
祖母と母が料理研究家という家庭で育つ。幼い頃は肥満児。高校時代はアメリカンフットボールに熱中し、大学在学中にアパレルメーカーに就職。20代前半は服飾ブランドのディレクターを務める。その後、母(料理研究家・杵島直美)のアシスタントになり5年間の修行を経て28歳で独立。修行時代からの目標だった番組「きょうの料理」(NHK)に29歳で初出演。「あさイチ」(NHK)や旅番組出演のほか、全国での料理教室やイベント・講演会などにも多数出演。2016年、「きじまりゅうたの小腹がすきました!」(NHK)がスタートし、さらに活動の幅を広げている。楽しく分かりやすいトークとオリジナリティーあふれる料理をモットーに男性のリアルな視点から考えた「若い世代にもムリのない料理」の作り方を提案している。趣味はサーフィン、山歩き、ブラックミュージックを中心とした音楽鑑賞。いまはジビエにも興味津々。