料理研究家きじまりゅうた
料理:きじまりゅうた / 構成:森綾 / 写真:小林みのる
味噌は、土地ごとにしっかりと根を下ろしている食材。「味噌と野球の話はしちゃいけない」と言われるくらい、お国自慢の種になるものです。米麹(こうじ)を使うのか麦麹を使うのかといった素材の違い、入れる麹の量や塩の量の違いで、風味のまったく違う味噌ができるのですから、とても興味深いですね。
僕自身は東京育ちですが、祖母の両親は新潟の人だったので、我が家は越後系の味噌なのかもしれません。関東でポピュラーな信州味噌と作り方と味もほぼ同じです。今も、毎年、多少は手前味噌も作るようにしています。熟成すると、どんどん色は茶色くなります。熟成にかけた年数によって風味が変わってくるのも味わい深いものです。
今回は、数ある味噌から、関東で一般的に信州味噌と呼ばれる関東赤味噌と京都の西京(さいきょう)味噌と呼ばれる白味噌を選んで使いました。どちらも、大豆に米麹と塩を混ぜて発酵させたものですが、西京味噌は信州味噌に比べると麹の量が多く、塩分量は少なく作られています。甘味が強く、上品な味に仕上げたい料理に向いています。
今回は、この西京味噌を使って乳製品がダメな人でも食べられる、まろやかな甘さのあるカルボナーラにしてみました。食べるとクリーミーで、「牛乳入っていないんですか?」と聞かれるくらいです。冷めると味噌が固まりやすいので、熱々で召し上がってください。
一方の信州味噌は貯蔵の期間も長く、庶民的。今回はサバを使った味噌煮風の料理を紹介します。
「サバの味噌煮」は案外難しいという人が多いですね。煮詰め過ぎてしょっぱくなったり、逆に火の通りが悪かったり。そこで誰でも簡単に作れる方法として、先にサバを低温でゆでて、練り味噌をかけるという作り方をご紹介します。こうすることで、調味料の量も抑えられます。また、先に低温でゆでると、煮過ぎて調味料の浸透圧で魚の味が抜けてしまうことがありません。
魚の先ゆでは、食べやすいし、作り方も楽。今回のように練り味噌だけではなく、醤油と生姜、梅干しを煮たものをかければ梅煮風にもアレンジできます。タレの種類でバリエーションが増えるのもいいところです。実は魚の生臭さが出る温度は、ぼこぼこと沸騰する高い温度なんです。急激な温度変化は皮もはがしてしまいますが、低温で火を入れるときれいなまま。いいことづくめの「先ゆで」、ぜひやってみてくださいね。
サバ・・・2切れ
しょうが・・・1片
細ねぎ・・・6本
サバをゆでた汁*・・・大さじ4* ゆで汁は捨てないでとっておく
〈A〉
酒・・・大さじ3
水・・・100ml
〈B〉
関東赤味噌・・・大さじ2と1/2
砂糖・・・大さじ1と1/2
みりん・・・大さじ1
醤油・・・大さじ1/2
スパゲティ・・・200g
春菊・・・50g
ブロックベーコン・・・60g
卵黄・・・2個
白味噌・・・大さじ4
スパゲティのゆで汁*・・・100ml* ゆで汁は捨てないでとっておく
無調製豆乳・・・100ml
オリーブオイル・・・大さじ2
PROFILE
きじまりゅうた
祖母と母が料理研究家という家庭で育つ。幼い頃は肥満児。高校時代はアメリカンフットボールに熱中し、大学在学中にアパレルメーカーに就職。20代前半は服飾ブランドのディレクターを務める。その後、母(料理研究家・杵島直美)のアシスタントになり5年間の修行を経て28歳で独立。修行時代からの目標だった番組「きょうの料理」(NHK)に29歳で初出演。「あさイチ」(NHK)や旅番組出演のほか、全国での料理教室やイベント・講演会などにも多数出演。2016年、「きじまりゅうたの小腹がすきました!」(NHK)がスタートし、さらに活動の幅を広げている。楽しく分かりやすいトークとオリジナリティーあふれる料理をモットーに男性のリアルな視点から考えた「若い世代にもムリのない料理」の作り方を提案している。趣味はサーフィン、山歩き、ブラックミュージックを中心とした音楽鑑賞。いまはジビエにも興味津々。