料理研究家きじまりゅうた
文:きじまりゅうた / 写真:木村文平
アジアの料理は、本当に発酵食品をよく使います。僕たちがずっと食べている和のごはんも、意識しなくても発酵食品がいっぱいです。まず醤油(しょうゆ)がそうだし、味噌(みそ)、酢、鰹節(かつおぶし)など味の決め手になるものが多いのです。
そんななかで、意外にも頼れる存在が納豆です。食材としては植物性のタンパク質が豊富で食べごたえがあり、調味料としてはうまみだしにもなる。結構なスーパーフードじゃないですか。使い分けとしては、食材として存在感を出したいときは大粒納豆を。調味料的に使うときは、小粒納豆やひきわり納豆を使うのがよいと思います。
今回の「泡納豆のバクダン和え」は、小粒納豆を少量の酢で泡立てて、調味料的に使いました。酢を混ぜることによって、納豆の粘りの結合をゆるめ、空気を含みやすくするのです。結合はゆるんでも消えることはないですから、納豆の粘りってすごいんですね。
また「なっとう回鍋肉(ホイコーロー)」では大粒納豆を使い、食材としての食べごたえを出しました。たれとして合わせていますから、うまみももちろん生きています。豆板醤(とうばんじゃん)の香りと色をしっかり出し、見た目も美味しそうに仕上げましょう。あらかじめ、キャベツをレンジにかけておくのもポイントで、こうすると後でフライパンでからめるだけでいいので、シャキシャキに仕上がります。
納豆は中華料理の豆鼓(トウチ)のように使うと面白いし、韓国料理ではキムチ鍋に入れると調味料としてまた生きます。いろいろと試してみてください。
祖母も母も料理研究家という家で育った僕は、物心ついたときには朝ごはんに納豆を食べていました。幼稚園に入りたての頃、園になじめなくて夏休みに新潟の祖母のいとこの家に連れて行ってもらったことがありました。そうしたら「畑のネギをとっておいで」と言われて、自分でとってきたばかりのネギを納豆に入れて食べたのが本当に美味しかった。周りは60〜70代の人たちばかりの、優しい大人に囲まれて精神的にも癒やされましたね。
前日の夕飯だったすき焼きの残りと、納豆をご飯にかけて食べたりしました。今でも牛丼のお店に行って、牛皿と納豆を頼んで食べると、ふっと、あの新潟の夏休みを思い出すんですよ。
小粒納豆・・・1パック(50g)
まぐろの刺身・・・100g
アボカド・・・1個
長いも・・・100g
卵黄・・・1個
醤油・・・適量
青のり・・・適量
〈A〉
酢・・・小さじ1
塩・・・少々
大粒納豆・・・1パック(50g)
薄切り豚ばら肉・・・100g
キャベツ・・・300g
長ネギ・・・10cm
にんにく・・・1片
豆板醤・・・小さじ1/2
ごま油・・・大さじ1/2
〈A〉
酒・・・大さじ2
味噌・・・大さじ1
砂糖・・・大さじ1/2
醤油・・・大さじ1/2
PROFILE
きじまりゅうた
祖母と母が料理研究家という家庭で育つ。幼い頃は肥満児。高校時代はアメリカンフットボールに熱中し、大学在学中にアパレルメーカーに就職。20代前半は服飾ブランドのディレクターを務める。その後、母(料理研究家・杵島直美)のアシスタントになり5年間の修行を経て28歳で独立。修行時代からの目標だった番組「きょうの料理」(NHK)に29歳で初出演。「あさイチ」(NHK)や旅番組出演のほか、全国での料理教室やイベント・講演会などにも多数出演。2016年、「きじまりゅうたの小腹がすきました!」(NHK)がスタートし、さらに活動の幅を広げている。楽しく分かりやすいトークとオリジナリティーあふれる料理をモットーに男性のリアルな視点から考えた「若い世代にもムリのない料理」の作り方を提案している。趣味はサーフィン、山歩き、ブラックミュージックを中心とした音楽鑑賞。いまはジビエにも興味津々。