きじまりゅうた「小粒と大粒を使い分け。調味料にもなる納豆のうまみを生かしたレシピ」

はじめての発酵食レシピ Vol.16小粒と大粒を使い分け。調味料にもなる納豆のうまみを生かしたレシピ

料理研究家きじまりゅうた

今回からは、アイデア豊富なレシピが人気の料理研究家きじまりゅうたさんに教えていただきます。植物性タンパク質として食べごたえもあり、発酵していることで独特のうまみもある納豆。和食の小鉢としてだけではなく、さまざまに形を変えていただくことができます。納豆の意外な使いかた、今日から取り入れてみてください。

文:きじまりゅうた / 写真:木村文平

食材としては植物性タンパク質が豊富。調味料としてはうまみもばっちりな発酵食品、納豆!

アジアの料理は、本当に発酵食品をよく使います。僕たちがずっと食べている和のごはんも、意識しなくても発酵食品がいっぱいです。まず醤油(しょうゆ)がそうだし、味噌(みそ)、酢、鰹節(かつおぶし)など味の決め手になるものが多いのです。

そんななかで、意外にも頼れる存在が納豆です。食材としては植物性のタンパク質が豊富で食べごたえがあり、調味料としてはうまみだしにもなる。結構なスーパーフードじゃないですか。使い分けとしては、食材として存在感を出したいときは大粒納豆を。調味料的に使うときは、小粒納豆やひきわり納豆を使うのがよいと思います。

大粒納豆(左)、小粒納豆(右)大粒納豆(左)、小粒納豆(右)

酢を入れて混ぜると泡立つ納豆。炒めてもうまみも味もしっかりと残る

今回の「泡納豆のバクダン和え」は、小粒納豆を少量の酢で泡立てて、調味料的に使いました。酢を混ぜることによって、納豆の粘りの結合をゆるめ、空気を含みやすくするのです。結合はゆるんでも消えることはないですから、納豆の粘りってすごいんですね。

また「なっとう回鍋肉(ホイコーロー)」では大粒納豆を使い、食材としての食べごたえを出しました。たれとして合わせていますから、うまみももちろん生きています。豆板醤(とうばんじゃん)の香りと色をしっかり出し、見た目も美味しそうに仕上げましょう。あらかじめ、キャベツをレンジにかけておくのもポイントで、こうすると後でフライパンでからめるだけでいいので、シャキシャキに仕上がります。

納豆は中華料理の豆鼓(トウチ)のように使うと面白いし、韓国料理ではキムチ鍋に入れると調味料としてまた生きます。いろいろと試してみてください。

納豆で思い出す。子どもの頃に預けられた、新潟の優しい人たちとのふれあい

祖母も母も料理研究家という家で育った僕は、物心ついたときには朝ごはんに納豆を食べていました。幼稚園に入りたての頃、園になじめなくて夏休みに新潟の祖母のいとこの家に連れて行ってもらったことがありました。そうしたら「畑のネギをとっておいで」と言われて、自分でとってきたばかりのネギを納豆に入れて食べたのが本当に美味しかった。周りは60〜70代の人たちばかりの、優しい大人に囲まれて精神的にも癒やされましたね。

前日の夕飯だったすき焼きの残りと、納豆をご飯にかけて食べたりしました。今でも牛丼のお店に行って、牛皿と納豆を頼んで食べると、ふっと、あの新潟の夏休みを思い出すんですよ。

発酵食RECIPE

泡納豆のバクダン和え

泡納豆のバクダン和え

▼材料(1〜2人分)

小粒納豆・・・1パック(50g)

まぐろの刺身・・・100g

アボカド・・・1個

長いも・・・100g

卵黄・・・1個

醤油・・・適量

青のり・・・適量

〈A〉

酢・・・小さじ1

塩・・・少々

泡納豆のバクダン和えの材料
▼作り方
  1. まぐろは7〜8mm角のさいの目に、アボカドは5mm幅の薄切りにする。
  2. 長いもは皮をむき、ポリ袋に入れて叩き潰す。1〜2cm角のかたまりが残る程度に潰すと食感がよい。
  3. 小さな器に納豆を入れ、〈A〉を入れて泡が白くなるくらい混ぜる。
  4. 器に1と2の具材を盛り合わせ、上から3の納豆をかけて、卵黄をのせる。
  5. 青のりを振り、醤油をかける。全体を混ぜて食べる。
泡納豆のバクダン和えの作り方
なっとう回鍋肉

なっとう回鍋肉

▼材料(2人分)

大粒納豆・・・1パック(50g)

薄切り豚ばら肉・・・100g

キャベツ・・・300g 

長ネギ・・・10cm

にんにく・・・1片

豆板醤・・・小さじ1/2

ごま油・・・大さじ1/2

〈A〉

酒・・・大さじ2

味噌・・・大さじ1

砂糖・・・大さじ1/2

醤油・・・大さじ1/2

なっとう回鍋肉の材料
▼作り方
  1. 材料を切る。長ネギは1cm幅の輪切りに、にんにくは3mmの薄切りに。豚肉は5cmの長さに切り分ける。キャベツは5cm幅に切る。
  2. キャベツを耐熱ボールに入れ、ラップをしてレンジに2分かけてしんなりさせておく。
  3. たれを作る。納豆と〈A〉の調味料を混ぜ合わせておく。
  4. フライパンにごま油を入れて火にかけ、豚肉をさっと炒めて、色が変わり始めたら、薄切りのにんにくと長ネギ、豆板醤を入れる。香りが立ったら3の納豆だれを加えて炒め合わせる。
  5. 最後に2のキャベツを入れて炒め合わせる。
なっとう回鍋肉の作り方

PROFILE

きじまりゅうた

祖母と母が料理研究家という家庭で育つ。幼い頃は肥満児。高校時代はアメリカンフットボールに熱中し、大学在学中にアパレルメーカーに就職。20代前半は服飾ブランドのディレクターを務める。その後、母(料理研究家・杵島直美)のアシスタントになり5年間の修行を経て28歳で独立。修行時代からの目標だった番組「きょうの料理」(NHK)に29歳で初出演。「あさイチ」(NHK)や旅番組出演のほか、全国での料理教室やイベント・講演会などにも多数出演。2016年、「きじまりゅうたの小腹がすきました!」(NHK)がスタートし、さらに活動の幅を広げている。楽しく分かりやすいトークとオリジナリティーあふれる料理をモットーに男性のリアルな視点から考えた「若い世代にもムリのない料理」の作り方を提案している。趣味はサーフィン、山歩き、ブラックミュージックを中心とした音楽鑑賞。いまはジビエにも興味津々。