料理家井澤 由美子
文・写真:井澤由美子
そうめん、冷やし中華、もりそば、冷たい酎ハイに生ビール。夏は冷たいものに手が伸びがちですが、食べ過ぎると外の気温は高くても、お腹の中は冷えてしまいます。腸を冷やすと、免疫力にも影響が出ますし、夏バテの大きな要因になります。
井澤家では昔からそうめんにはしょうがを添えていただくことが多いのですが、これはとても理にかなっていました。しょうがは、中医学で「百邪(ひゃくじゃ)を防御する」と言われる生薬で、体を温めるほかさまざまな効果があり、食養生に欠かせない食材とされてきました。皮にも効能があるのできれいにむいてしまわずに、たわしでこするか、スプーンでこそぐくらいにしましょう。
たまねぎは年中食べたい食材です。体を温め、血中の脂質を減らして体内の余分なナトリウムを排出してくれる効果が期待できます。にんにくも体を温めてくれて、疲労回復におすすめの食材。しょうが、たまねぎ、にんにく。体を温める3つの香味野菜と、塩麹を合わせることで、栄養たっぷりの万能調味料「香味麹」になります。
それぞれ1種類でもいいのですが、3つを合わせるとなんとも奥深い、良い味になるのです。鶏ガラスープの素やだしの素などを使わなくても、天然のうま味がある体に優しい手作り調味料になります。
塩分を控えめにしたい方や、野菜嫌いのお子さんにもおすすめです。また、香味麹にお肉を漬けておくと、麹が生み出す酵素が柔らかくもしてくれます。
この香味麹は、冷凍であれば2カ月くらい長期保存が可能です。麹菌は、高温で加熱すると死滅しますが、冷凍では生きていて風味も損ないません。そしてカチカチには凍らずシャーベット状になっていますので、調味料として使う以外に、トマトサラダにそのままかけたり、トマトジュースで割ってガスパチョにするなど、冷たいスープとしてもいただけます。チャック付きの保存袋に入れて、平たくして冷凍保存するのが使いやすくておすすめです。
アルコールで割ると、面白いカクテルにもなりますね。もちろん、鍋もの、炒めもの、煮物、蒸した肉や野菜にかけたり、ドレッシングの素にしたりと、使い道がたくさんあります。
少し加えるだけで、どんな料理もぐんと美味しくなる麹の力は感動的。無添加、手作りの調味料、ぜひお試しください。今回は、市販の塩麹と混ぜて作りますが、もちろん、塩麹から手作りしてもいいですよ。
PROFILE
井澤由美子(いざわ・ゆみこ)
料理家。調理師・国際中医薬膳師・国際中医師*。海外雑誌「マーサ・スチュワート」の日本版編集部、広告制作部より独立。体を健やかに保つ発酵食や、薬膳、保存食作りをライフワークとし、季節の素材で美味しく健康的なレシピを提案している。レモン塩や乳酸キャベツのブームの火付け役としても知られ、手作りの良さを広めている。NHK「きょうの料理」、「あさイチ」などの料理番組のほか、商品開発や雑誌、講演など活動は多岐にわたる。著書に「『ストウブ』でもてなしごはん&毎日おかず」、「痩せる!きれいになる!病気にならない!乳酸キャベツ健康レシピ」、「体がよろこぶお漬け物:乳酸発酵の力で、体の中から美しく」など多数。* 国際中医薬膳師・国際中医師:「国際中医薬膳師」は中国政府が直轄する中国中医薬研究促進会が、能力認定試験を行い、認定証書の発行をしている資格。「国際中医師」は中国の伝統医学、中医学を中国国内だけではなく世界に普及させるために設けられた資格。中国政府の外郭団体である世界中医薬学会連合会が主催する国際中医師試験に合格する必要がある。