料理家井澤 由美子
文・写真:井澤由美子
今年の冬は寒いと言われていますが、さていかがでしょう。風邪に負けない、免疫力の強いカラダを維持するためにも、食事には気を配りたいですね。寒さを感じると、温かいごはんが進みますから、甘辛いおかずも出番が増えそうです。
韓流ドラマで登場人物が美味しそうに韓国料理を食べているのを見るからでしょうか。日本でも、10年前は食べなかったような韓国料理にも人気が集まっています。その韓国料理にも、発酵食品はいろいろあります。代表的なものはキムチですが、日本の味噌のような韓国の味噌もあります。
日本の味噌とは違う独特の香りがあり、潰した豆は粗め。現地のチゲ鍋はこの味噌を使って作られていますから、それを日本で真似しようとすると、味噌に納豆を入れたものに似ていると気づきました。本場の味を楽しみたい方は、ぜひ納豆を入れてお試しください。
韓国料理でよく使う調味料・コチュジャン。コチュジャンは、もち米と唐辛子を発酵させ、水あめなどを混ぜて発酵させて作るうまみ調味料です。日本では、焼肉屋さんのテーブルなどには置かれていたりしますが、まだまだ常備しているというお宅は少ないかもしれません。
そこで、わざわざ買ってこなくとも、味噌や醤油などを使って「コチュジャン風」な調味料を手作りしてみてはいかがでしょう。余ったら、練りごまや酢を混ぜて味に変化をつけ、コクのあるたれにしてもいいものです。
焼いた野菜にかけると、それだけでごちそうになります。寒くなるとなかなか生の野菜は食べづらいものですが、山盛りのサラダボウルも甘辛いたれだと箸が進むし、白身のお刺身などを乗せてカルパッチョ風にしてもよいですね。
韓国を旅したとき、イカの炒めものが人気でしたが、このたれはその本場の味に近いものです。酢を少し加えて酢コチュジャンにすれば、たこやゆで野菜、海藻と絡めたナムル風の副菜もすぐにできます。葉野菜や豆腐にかけてもいいですよ。
それぞれの国に、発酵の物語があるのでしょう。何かが腐っているのではなく、発酵して、偶然美味しくなっていた。そのまま保存もできる。それを食べてみたところ、おなかの調子がよくて元気が出るし、肌の調子も良さそうなどと、誰かが身をもって発見していったのでしょう。
私たちもその恩恵にあずかることにしましょう。
PROFILE
井澤由美子(いざわ・ゆみこ)
料理家。調理師・国際中医薬膳師・国際中医師*。海外雑誌「マーサ・スチュワート」の日本版編集部、広告制作部より独立。体を健やかに保つ発酵食や、薬膳、保存食作りをライフワークとし、季節の素材で美味しく健康的なレシピを提案している。レモン塩や乳酸キャベツのブームの火付け役としても知られ、手作りの良さを広めている。NHK「きょうの料理」、「あさイチ」などの料理番組のほか、商品開発や雑誌、講演など活動は多岐にわたる。著書に「『ストウブ』でもてなしごはん&毎日おかず」、「痩せる!きれいになる!病気にならない!乳酸キャベツ健康レシピ」、「体がよろこぶお漬け物:乳酸発酵の力で、体の中から美しく」など多数。* 国際中医薬膳師・国際中医師:「国際中医薬膳師」は中国政府が直轄する中国中医薬研究促進会が、能力認定試験を行い、認定証書の発行をしている資格。「国際中医師」は中国の伝統医学、中医学を中国国内だけではなく世界に普及させるために設けられた資格。中国政府の外郭団体である世界中医薬学会連合会が主催する国際中医師試験に合格する必要がある。