料理家井澤 由美子
文・写真:井澤由美子
アトリエの庭、実家の庭でも、野菜を育てています。土から育てた野菜は、料理をしたときも盛りつけたときも、元気も見栄えも違います。
この季節はきゅうり、ナス、そしてたわわになるのがトマト。トマトの赤い色素であるリコピンは、非常に高い抗酸化作用で知られています。言わばからだの「サビ止め」ですね。夏野菜のなかで最もうまみが強く、グルタミン酸も豊富です。
その上、トマトは胃腸を整えてくれますし、ビタミンCも豊富です。肉や魚と一緒に食べると、美肌にも、疲労回復にも役立ってくれます。私はミニトマトも栽培しています。こちらはベランダでもできますから、ぜひお試しください。どんどん実がついて、楽しませてくれます。
うまみたっぷりなトマト。イタリア料理の決め手はこのトマトのソースですよね。でも麹を混ぜて発酵させた「トマト塩麹」なら、どんな料理にでも合う万能調味料になり、用途が広いです。
このトマトを使った発酵食「トマト塩麹」は、誰でも簡単に作れます。私は塩、麹、トマト、唐辛子、にんにくを合わせ、寝かせて発酵させる方法ですが、もっと簡単にできるのは、塩麹、トマト、唐辛子などを撹拌(かくはん)してソースにする手法。お好みでにんにくやしょうがを加えてもOK。出来上がったものを密封袋などに入れて冷凍すればカチカチにはなりませんから、その後の調理にすぐ使えます。冷凍だと2~3カ月、冷蔵でも1カ月は保存できます。
例えばガスパチョ(スペイン料理とポルトガル料理の冷製スープ。トマトを用いたものが一般的)だと、凍らせたトマト塩麹に好みの野菜を加えれば完成。おろしたきゅうりや玉ねぎ、しそなどを入れるとちょっと和風に。レモングラスをスティックにすれば少しエスニック風にアレンジできます。
凍らせたトマト塩麹に、いいちこを好みに応じて適量加え、レモングラスや野菜などでステアするだけで、ガスパチョのいいちこ割りもできますよ! 好みでおろしきゅうり、刻んだ玉ねぎなどを加えるのもおすすめです。
中華風の一皿にもなります。トマト塩麹に、はちみつや砂糖などの甘みを少し加えれば、夏向きのエビチリがすぐできます。オムレツのソースにしても、エキストラバージンオリーブオイル、ごま油などと合わせて、ドレッシングにするのもいいでしょう。
ミニトマトは、甘酒梅麹漬けにするのもおすすめです。叩いた梅干し、ハチミツ、甘酒を混ぜたものに、穴を数カ所開けたミニトマトを入れ、冷蔵庫で3時間くらい冷やします。こちらは甘酒の麹と梅とトマトで、クエン酸とカリウムが合わさり、美味しい上に疲労回復にもつながります。
美味しくて元気になれるトマト。赤い見た目も食欲増進になりますね。
材料は3つだけ、本当にシンプルだから夏の常備調味料におすすめです。お好みでにんにくやしょうがを加えてください。
※シーフードミックスを使用する場合は解凍してから載せる。あれば、いか、あさり、海老、タコなど
トマト塩麹にはうまみがたっぷりなので、他の調味料は要りません。シーフードの他に、チキンや豚肉などもよく合います。
PROFILE
井澤由美子(いざわ・ゆみこ)
料理家。調理師・国際中医薬膳師・国際中医師*。海外雑誌「マーサ・スチュワート」の日本版編集部、広告制作部より独立。体を健やかに保つ発酵食や、薬膳、保存食作りをライフワークとし、季節の素材で美味しく健康的なレシピを提案している。レモン塩や乳酸キャベツのブームの火付け役としても知られ、手作りの良さを広めている。NHK「きょうの料理」、「あさイチ」などの料理番組のほか、商品開発や雑誌、講演など活動は多岐にわたる。著書に「『ストウブ』でもてなしごはん&毎日おかず」、「痩せる!きれいになる!病気にならない!乳酸キャベツ健康レシピ」、「体がよろこぶお漬け物:乳酸発酵の力で、体の中から美しく」など多数。* 国際中医薬膳師・国際中医師:「国際中医薬膳師」は中国政府が直轄する中国中医薬研究促進会が、能力認定試験を行い、認定証書の発行をしている資格。「国際中医師」は中国の伝統医学、中医学を中国国内だけではなく世界に普及させるために設けられた資格。中国政府の外郭団体である世界中医薬学会連合会が主催する国際中医師試験に合格する必要がある。