料理研究家・管理栄養士舘野 真知子
文・写真:舘野真知子
私は葉山に引っ越してくる前から、もう20年以上、毎年、梅仕事として梅干しや梅酒を漬けています。
梅酒の古いものは色も味も濃厚になって、どんどん熟成していきます。さすがにさらっと飲めるような代物ではなくなってしまいますが、その年の梅酒はその年の思い出をもっているので、飲み切ってしまうのも寂しいような気がして。そんなことを思っていると、どんどん溜まっていくのです。
特に、5年前に亡くなった義父が千葉の鴨川で梅農家をやっていて、健在だった頃に手伝って、一緒に漬けたものがあるのです。それはなかなか飲めません。
義父はもともと写真館を経営していたのですが、あるとき、店を畳んで土地を買い、梅の木を100本くらい植えて、かなり本格的に農業を始めたのです。
あの時の梅はこうだったな、こんな話をしたな……そんなことを思い出していると、その年の梅酒は飲まずに置いておきたくなるのです。
すっきりと飲み口の良い梅酒は、その年に漬けたものです。
私の梅酒は配合が決まっていて、梅1kgに対し、焼酎(ホワイトリカー)を1.2L、氷砂糖は600g。
昔は梅と同量の氷砂糖を入れた人も多かったようですが、かなり甘くなりますので、健康志向の今はそのくらいでいいのではと思います。それに、甘味は後から足せますからね。ブランデーで漬けることもありますが、すっきり度合いは、焼酎に軍配が上がります。
※自家製梅酒をつくる場合、酒税法の規定で、アルコール20度以上の酒類で漬けなければならず、ぶどうや穀類等と一緒に漬けることは禁止されています。自家製梅酒は、他者への提供や販売、譲渡はできません。
焼酎で漬けた梅酒は、さっぱり系のデザートが欲しいときにいいですね。瓶の底に2〜3cm残っている、なんていう時にぜひ試してもらいたいです。
今回のレシピはキウイを加えたり、炭酸水を加えたりしています。キウイもキッチンに1個だけ転がっていたりしませんか。つぶつぶの食感や果肉感が梅と似ているので、相性がいいですよ。
でも、何もなくても水とお砂糖と梅酒があれば、シャーベットはできてしまいますし、ゼラチンを入れたらゼリーになります。気負わず、構えず、ぜひ作ってみてください。
料理にお酒を使う効能はいろいろありますが、日本酒と本格焼酎ではその特性が大きく違ってきます。日本酒は米の旨味が強い。これに対して本格焼酎の効能は、肉などの脂っこい素材をさっぱりさせ、柔らかくしてくれることでしょう。また、肉の臭みをとるのにも適しています。
本格焼酎は味わいがスッキリしているものが多いので、少し濃いめに味をつけると良いでしょう。今回は本格麦焼酎「いいちこ」で鶏手羽を煮てみましたが、何も入れない時の半分くらいの時間で柔らかくなるイメージですね。脂切れも良いので、豚の角煮などにも向いているでしょう。本格焼酎を使うときのポイントは、アルコールを飛ばすこと。アルコールは沸騰させると飛びますから、グツグツ煮れば大丈夫です。
こちらもぜひ試してみてくださいね。
PROFILE
舘野真知子(たての・まちこ)
料理研究家・管理栄養士。栃木で8代続く専業農家に生まれる。管理栄養士として病院に勤務後、2001年アイルランドの料理学校「Ballymaloe Cookery School」に留学。2003年に帰国後はフードコーディネーターとしてメディアなどで活動。2009年にはレストラン「六本木農園」の初代シェフを務め、新鮮な素材を生かして都市生活者の健康を意識した料理を提供。日本に伝わる伝統的な食文化を、現代の形に合わせてつないでいくワークショップなども企画・運営する。現在はフリーランスの料理家として、発酵料理をキーワードに、料理の楽しさや食べることの大切さを伝える活動をしている。