焼酎伝道師、「HONKAKU SPIRITS」ファウンダーのペレグリニ・クリストファーさん

もっと語ろう麹と発酵 Vol.19世界一の蒸留酒
「SHOCHU 焼酎」を、
世界のどこでも
当たり前に買える
お酒にしたい

焼酎伝道師、「HONKAKU SPIRITS」ファウンダーペレグリニ・クリストファー

アメリカ生まれで、日本の本格焼酎の伝道師として活動するペレグリニ・クリストファーさん。来日中、ふとしたきっかけで焼酎と出合い、一瞬で魅せられました。現在は日本に在住し、アメリカに本格焼酎を輸出する会社を経営しながら、世界に向けて焼酎の情報を発信しています。「本格焼酎は世界一の蒸留酒」と言うペレグリニさんに、本格焼酎の魅力、麹(こうじ)を使ったお酒の独自性、世界的なマーケットでの可能性などについて伺いました。
文:井上健二 / 写真:三井公一

17歳で全米最年少のブリュワーに

――ペレグリ二さんとお酒との出合いは、高校時代まで遡るそうですね。

僕はアメリカ北東部バーモント州の出身です。カナダとの国境に近く、自然が豊かで、僕が育ったのは人口2000人ほどの小さな町。高校時代、アメリカ史の授業で1920〜30年代の「禁酒法*1」時代について学んだとき、どうしてもお酒を飲みたいという人たちが自宅で密造酒をつくっていた事実を知りました。

「お酒って自宅でもつくれるの?」と興味を抱き、キッチンで友達とビールのホームブリューイング(自家醸造*2)をやってみたのがきっかけで、ビール醸造に興味を持ちました。*1 禁酒法:アメリカで1920年に施行された、アルコール飲料全般の製造、販売、輸送を禁止する法律。アルコール依存症や犯罪の抑制を目的としたが、結果的には密造酒の流通や非合法の酒場の増加を招き、1933年に廃止された。

*2 自家醸造:無免許の個人によるアルコール飲料の製造は日本では違法だが、アメリカでは可。

それで地元の「Otter Creek Brewing」というクラフトビール工房でアルバイトをすることになりました。まさにそのタイミングで、醸造責任者、日本酒で言えば杜氏(とうじ)さんですね、その彼がケガで骨折してしまい、しばらく休むことになりました。

次席を担うべき副杜氏がなぜか、「俺はニューヨークでピエロになる!」と言い出して突然辞めてしまったんです(笑)。他に誰も醸造を担当する人がいなくなってしまい、唯一の経験者だった僕がしばらくビールをつくることになりました。当時17歳。全米で最年少のクラフトビールのブリュワー(醸造家)だったと思います。

醸造責任者が復帰してからも、毎日夜10 時から朝まで副杜氏として醸造所の番をしました。夜中にたった1人で、だだっ広い蔵で作業をするのはとても怖くてしんどかったけれど、やりがいのある仕事でした。本当に楽しかった。

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――では、大学では醸造を学ばれたのですか。

いいえ、スペイン文学です(笑)。高校時代からスペイン語を学んでいて、スペイン文学に興味があったのです。

同時に僕は、陸上十種競技*3の選手としても活動していました。得意種目の棒高跳びでは、バーモント州の高校チャンピオンに2度輝きましたよ。あまり裕福な家庭ではなかったので、高校卒業後は奨学金をもらって、オハイオ州にあるウィッテンバーグ大学へスポーツ推薦で進学したのです。残念ながら、ウィッテンバーグ大学には醸造を学ぶプログラムはありませんでした。*3 陸上十種競技:10種目の陸上競技で構成されて2日間で行われる。 1日目の種目は、100m走、走幅跳、砲丸投、走高跳、400m走。 2日目は、110mハードル、円盤投、棒高跳、やり投、1,500m走。

大学卒業後はロンドンのユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの大学院で2年間教育を学びました。両親ともに教師だった影響もあり、教育にも興味があったのです。大学院を出てからアメリカに戻り、地元バーモント州で自分が卒業した高校の教師になりました。

ところが、その高校に私の妹が在校していました。兄が自分の先生ですからね、妹や彼女の友達が、お行儀良く私の言うことを聞いてくれるわけがありません(笑)。それですっかり教師の仕事が嫌になってしまい、考えを変えて、教師を辞めて、再びアメリカを飛び出ました。今度はアジアへ行くことにしました。大学の在学中にはスペインに留学もしていて、ヨーロッパには滞在経験がありましたから、自分の知らない世界に飛び込んでみたかったのです。

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始めに韓国のソウルへ行きました。アジア各国で英語教師の仕事を探したのですが、どうせなら自分のような欧米人がなるべく少ない国で過ごしてみたかった。日本、シンガポール、台湾、中国といろいろ調べてみて、欧米人がいちばん少ないのは韓国じゃないかと思ったのです。そこでいまの韓国人の妻と出会いました。

ソウルで2年ほど働いた後、彼女が「日本へ行ってみたい」と言い出しました。僕も、「1年くらいなら日本に住むのも面白そうだ」と思い、2人で東京へ向かいました。2002年のことです。

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焼酎の多様性に衝撃を受ける

――そしていよいよ焼酎に出合うわけですね。

東京では最初、英会話スクールの講師をしていました。しばらく暮らすうちに気の合う友達も増えてきて、「日本はいいね、東京は楽しい。1年ではとても足りない」と2人で話し合い、腰を落ち着けようということになりました。幸いにも早稲田大学で講師の仕事を得ることができました。

自宅の近くに、気さくな店主がやっている、日本酒の品揃えが自慢の小さな居酒屋がありました。すぐにお店と日本酒のファンになり、店主が薦める銘酒を毎日のように飲み比べました。店主に師事して日本酒の勉強を始めたのです。

それまでの日本酒経験というと、大学時代に戻ります。陸上十種競技のチームメイトが、たまたま和食好きで。大きな試合が終わると、自分たちへのご褒美として2人で和食を食べに出かけるのが恒例だったので、アメリカにいた時から和食にも日本酒にも少し馴染みがありました。ですが、その時飲んでいた日本酒はあまり美味しくなかった。ところが、東京の近所の居酒屋で飲む日本酒はまったくの別物で、美味しいじゃん!と思いました。

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そして運命のある日。雨が強く降り出して客足が途絶え、お客さんが僕だけになった。すると店主は「今日はこれ飲んでみて」と小さなグラスを出してくれました。課外授業のつもりだったのでしょうか。

見かけは透明で日本酒のようでしたが、グラスを鼻に近づけると香りがまったく違う。「これは日本酒じゃないね」と言いながら飲んでみたら、衝撃的に美味しかった。一目惚れです。記念すべき1杯目は麦焼酎でした。

「これが焼酎だ」と店主が言うので、僕は「ソジュじゃない!」と言い返しました。ソジュ(韓国焼酎)は韓国で散々飲んだけれど、それとは明らかに違う。発音が似ているから、少し混乱したのです。

――焼酎のどこにいちばん感銘を受けたのですか。

思わず「美味しい」と叫んだ僕に、店主は続いて芋、米、そば、黒糖と、次から次へと焼酎をテイスティングさせてくれました。みんな透明で見かけは同じなのに、驚くべきことにそれぞれにベース原料の風味がちゃんと残っている。ビールとモルトウイスキーは大麦麦芽、日本酒は米、ワインはぶどうからつくりますが、焼酎はどんな穀物からでも自在につくられる。その多様性で右に出るものがなく、「これぞ世界一の蒸留酒だ!」と感動しました。

この雨の日の焼酎との出合いが、僕のその後の人生を大きく変えたのです。

――その1カ月後には、鹿児島へ飛んだそうですね。

店主は英語がほとんどできず、僕はその頃日本語がまだ下手だった。でも、焼酎について片言でやり取りしているうちに、どうやら九州のKAGOSHIMAというところで多くの焼酎がつくられていると分かってきました。そこで、鹿児島で焼酎づくりを見たい、未知なる焼酎についてもっと掘り下げて、深く知りたいという気持ちが抑えられなくなったのです。ブリュワーの血が騒いだのです(笑)。

焼酎伝道師、「HONKAKU SPIRITS」ファウンダーのペレグリニ・クリストファーさん

アポなしで鹿児島市周辺の焼酎蔵を何軒か回りましたが、初めはどこも門前払いでした。日本語もおぼつかない外国人が、片言で「蔵を見せてください」といきなり訪ねてきても、入れてくれるわけがありませんよね。

焼酎伝道師、「HONKAKU SPIRITS」ファウンダーのペレグリニ・クリストファーさん

その後、東京と鹿児島を飛行機で往復しながら、無謀なアポなし訪問を何度か繰り返しているうち、扉が少しずつ開き始めました。鹿児島市を訪れると必ず、繁華街である天文館一帯の居酒屋で焼酎を楽しんでいたのですが、そうこうするうちに「東京から何度も通ってくるこの変なアメリカ人は、どうやら本気で焼酎を愛しているらしい」と分かってくれる人が増えてきました。そうした人の紹介で焼酎蔵に足を踏み入れることができたのです。

――初めて訪問した焼酎蔵で、どんな発見がありましたか。

僕が当時知っていた酒蔵はアメリカのビール醸造所だけでしたが、焼酎蔵はそれとは何もかも違いました。いちばんショックだったのは、何といっても麹の存在でした。ビールにもウイスキーにも、麹は使いませんからね。

麹? 何だ、カビじゃないか! なぜカビであんなに美味しい蒸留酒ができるんだ! それから焼酎の謎を解き明かしたいという思いが一層強まり、鹿児島以外の九州各県でもあちこちの焼酎蔵を訪ねて、徐々に見聞を広めて、知識を深めていきました。

英語で焼酎を紹介する「The Shochu Handbook」を刊行

――2006年から、焼酎の試飲会を開くなどの活動を本格的に始めましたね。

杜氏たちの姿を目の当たりにしたことが原動力になりました。これまで150以上の蔵を巡っていますが、どの蔵の杜氏も、自分たちのコミュニティーが大切にしてきた焼酎づくりの歴史と伝統を守るために、真摯に仕事と向き合っています。もっと焼酎にスポットライトが当たるべきだと考えたのです。

胸元に付けた「Shochu is good(焼酎はおいしい)」の言葉が、焼酎愛を物語っている胸元に付けた「Shochu is good(焼酎はおいしい)」の言葉が、焼酎愛を物語っている

特に知ってもらいたいと思ったのは、僕のような外国人に対してです。その頃外国人の中で焼酎について理解している人はほぼ皆無でした。日本酒は世界的にも高く評価されていましたし、同じ蒸留酒でもジャパニーズ・ウイスキーはブームの兆しが見えつつあった。でも、焼酎は国外ではずっと無名でした。その状況を少しでも変えたいと考えたのです。

胸元に付けた「Shochu is good(焼酎はおいしい)」の言葉が、焼酎愛を物語っている胸元に付けた「Shochu is good(焼酎はおいしい)」の言葉が、焼酎愛を物語っている

そこで2006年から、東京を中心に日本各地で焼酎の試飲会と、焼酎に関する講演会をスタートさせました。英語と日本語で行っていて、外国人向けに始めたのですが、蓋を開けてみたら参加者の8割くらいは日本人でした。僕が思った以上に、日本人も焼酎について知らなかったのかもしれません。

――その啓蒙活動の延長線上で、2014年には英語で「The Shochu Handbook」を刊行されましたね。

当時、英語で読めるちゃんとした焼酎の入門書籍はありませんでしたし、ネット上の情報も限られていました。だから、英語で読めるガイドブックが必要だと思ったのです。

2014年に刊行した「The Shochu Handbook」(Telemachus Press)。副題は「An Introduction to Japan's Indigenous Distilled Drink」(日本古来の蒸留酒入門)2014年に刊行した「The Shochu Handbook」(Telemachus Press)。副題は「An Introduction to Japan's Indigenous Distilled Drink」(日本古来の蒸留酒入門)

日本語で書かれた焼酎の書籍を英訳する方法もありましたが、あえてそうしなかった理由があります。僕自身、足を使って焼酎蔵を巡り、そこで多くの杜氏たちから直にいろいろな学びを得ました。その生きた知識を活用しながら、かつての僕のような焼酎に関する知識ゼロの外国人でも、その歴史から産地の特性、製法、種類、料理とのペアリングまで、トータルで理解できるオリジナルのガイドブックを作りたかったのです。

――この本のAmazonの口コミには、アメリカ、イタリア、イギリス、ドイツ、スペイン、オーストラリアと、世界各国から好意的な書評が寄せられていますね。

最初は思ったように売れませんでしたが、焼酎の世界的な認知度が上がるにつれて、最近ようやく少しずつ売れるようになってきました。10年前の本ですから、新しい情報を加えたセカンドエディション(第2版)をそろそろ出さないといけないと思っています。

――執筆にあたり、「焼酎唎酒師(ききさけし)」の資格を取ったそうですね。

本では、何が書いてあるのかも重要ですが、誰が書いたのかも大切。僕はまったく無名でしたから、「この人が言っているなら信じられる」と信頼されるような何らかの肩書きが欲しいと思っていました。そこで、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)の認定資格である「焼酎唎酒師」の取得にチャレンジしたのです。

焼酎に関する知識には自信がありましたが、試験はすべて日本語で行われますから、その点が大変でした。漢字なんてまるで読めませんでしたから。焼酎の試験というよりも、日本語の試験です(笑)。僕の日本語が上達したのは、この資格取得のおかげなんです。

焼酎伝道師、「HONKAKU SPIRITS」ファウンダーのペレグリニ・クリストファーさん

焼酎は食後酒より、食中酒としてのポテンシャルに惹かれる

――流暢な日本語で取材に応じてくださる背景には、そんなご苦労があったのですね。さて、蒸留酒は世界中でつくられています。例えば、ペレグリニさんの母国アメリカのバーボンウイスキーなど、世界の他の蒸留酒と焼酎の違いはどこにあると考えていますか。

バーボンもスコッチも、どちらかというと発酵そのものよりも、その後の樽熟成に重きを置いています。言い方は悪いのですが、多少いい加減に発酵しても、2回以上蒸留するので、樽で長期間、丁寧に寝かせれば豊かな風味を帯びるようになるのです。ジンも蒸留を繰り返し、その後にボタニカル*4で風味付けします。

でも、単式蒸留*5で1度しか蒸留しない本格焼酎では、ごまかしは一切利かない。主原料と水、麹と酵母以外の添加物もゼロですから、発酵こそ命。そこが蔵人の腕の見せどころであり、だからこそ麹が醸す主原料の味と香りが生きてくるのです。*4 ボタニカル:ベースとなる蒸留酒に加える風味付けの植物素材。

*5 単式蒸留:単式蒸留機を使用し、1度の蒸留でアルコールを抽出する、伝統的な焼酎の製法。原料の風味が残り、個性的な味わいになる。単式蒸留機で蒸留した焼酎のうち、特定の原料(麦・米などの穀類、芋類、清酒粕、黒糖)および麹を使用し、水以外の添加物を加えないものを「本格焼酎」と呼ぶ。

――現在、日本からアメリカへ本格焼酎を輸出する会社を立ち上げて、とくにアメリカでの本格焼酎の普及に力を入れていらっしゃいます。アメリカでいま焼酎はどのくらい広まっていますか。

たぶん日本人の想像を超えていますよ。大都市の大きな酒屋では焼酎を数種類置くのが普通。ニューヨーク・マンハッタンのある一流ホテルのバーのドリンクメニューには、1ページ目のスパークリングワインに続いて、2ページ目には焼酎のBTG(by the glass)のリストが並んでいて、ワイングラスで焼酎が提供されます。

日本のお酒に注目している飲食店関係者は多く、彼らから毎日のように僕のところに相談メールが入ります。10年前は、飛び込み営業で「焼酎って知っていますか?」と切り出しても、多くは「ノーサンキュー!」と突き返されていたのに、いまでは向こうから「焼酎の詳しい話をぜひ聞かせてください」と身を乗り出してきます。

焼酎伝道師、「HONKAKU SPIRITS」ファウンダーのペレグリニ・クリストファーさん

――焼酎が麹菌、つまり微生物の働きを活用して醸す蒸留酒だという点は、世界ではマイナスポイントにならないのでしょうか。

その点に関しては何も心配いりません。

和食がグローバル化してきて麹を料理に使うレストランも増えた結果、UMAMIと並んでKOJIの認知度が上がり、麹に対する抵抗感はほとんどなくなりました。カビでつくるチーズだってあるのだから、麹を毛嫌いするのはナンセンスだとみんな気づいています。いまや「Mold(カビ) is Gold」、「Mold is Magic」と逆に賞賛される存在です。

――焼酎が世界でより一層浸透するうえでは、何が大事だと思いますか。

焼酎のライバルは、他の蒸留酒ではなく醸造酒、つまりビールやワインだと考えています。アルコール度数の高い食後酒としてではなく、食中酒としてのポテンシャルが高いと個人的に思っているのです。

焼酎伝道師、「HONKAKU SPIRITS」ファウンダーのペレグリニ・クリストファーさん

例えば、前日からあらかじめ水と混ぜておく前割りや、フレッシュな果汁や炭酸と組み合わせたチューハイは、和食だけでなくイタリア料理やスペイン料理、スパイスを利かせたエスニック料理などにもよく合います。チューハイにするなら、トニックウオーターとソーダを混ぜたソニックで割ると甘すぎず、いい感じに仕上がると思います。

アメリカでもRTD*6市場は活況ですが、そこでも本格焼酎を用いたナチュラルフレーバーのチューハイなら受け入れられる余地が十分あると思う。鍵を握るのは価格ですね。4缶入りのパックで10〜12ドルなら、きっと売れますよ。*6 RTD:「Ready to Drink」の略で、缶チューハイや缶カクテルなど「蓋を開けるだけですぐ飲める」アルコール飲料。アメリカではハードセルツァーと呼ばれる低アルコール、低カロリーの炭酸入りアルコール飲料が人気。

焼酎伝道師、「HONKAKU SPIRITS」ファウンダーのペレグリニ・クリストファーさん

カクテルベースとしても有望です。オールド・ファッションド、マンハッタン、ネグローニといったウイスキーやジンがベースの定番カクテルで、代わりのベースとして焼酎を用いるのです。麹の豊かなニュアンスで、これまでとは違った美味しさが表現できるでしょう。

さらに言うなら、焼酎の大きな利点は、どんな飲み方でも自由に楽しめる点にあると思っています。ストレートもいいし、ロック、水割り、ハイボールと好きに選べる。温めて飲む蒸留酒はまずありませんが、焼酎はお湯割りも美味しいですよね。僕自身、夏も含めて1年中お湯割りで飲んでいます。沸騰させたお湯を有田焼のカップに注いで5〜6分冷まし、そこへ静かに焼酎を注ぐのです。銘柄にもよりますが、比率はだいたい5対5が多いですね。

――美味しそうですね。今度やってみます。最後に、ペレグリ二さんのゴールはどこにありますか。

それは焼酎が他の蒸留酒と世界中で肩を並べることです。

ウイスキー、ジン、ウオッカ、ラム、メスカル、テキーラといった蒸留酒は、世界各地の酒屋で当たり前のように売られており、バーでもレストランでもカジュアルに楽しめます。焼酎がその仲間入りを果たす時が来るまで、僕は日々普及の努力を続けます。人口2000人の僕の生まれ故郷の小さな酒屋に、本格焼酎が並ぶ日が来たら最高ですね!

ペレグリニ・クリストファー

PROFILE

ペレグリニ・クリストファー

アメリカ・バーモント州生まれ。イギリスの大学院を卒業後、韓国に移住し、2002年来日。自宅近くの居酒屋で焼酎と偶然出合い、以来焼酎のとりこに。九州を中心に蔵を訪ね歩いて焼酎について深く学び、「焼酎唎酒師」の資格を取得した。2014年には海外向けの英語の焼酎ガイド本「The Shochu Handbook」(Telemachus Press)を刊行。2020年に本格焼酎、泡盛を中心とする日本のスピリッツをアメリカに輸出する会社「HONKAKU SPIRITS」を立ち上げる。焼酎と泡盛の伝道師として幅広い層に向け、多言語でセミナーや試飲会を開催、クールジャパン焼酎&泡盛アンバサダーとしても活動している。