〈ウォーキングモデルコース〉
距離:約10km
所要時間:約3時間
竹田市の緒方川沿いに点在する湧水と、歴史を感じさせる石橋を巡るコース。竹田の湧水群は名水百選にも選定されており、水汲み場もあちこちに設けられているので手軽に喉を潤せる。ウォーキング用に水筒やウォーターボトルを用意し、豊富に流れる阿蘇山系の伏流水で満たして出発しよう。
河宇田湧水(かわうだゆうすい)は竹田の湧水群の中でも最も湧水量が多く、水汲み場は地元の人と観光客でにぎわう。周辺には、釣り堀とそこで育った川魚を振る舞う郷土料理店にラーメン店、また広めの駐車場とトイレがあるので、ウォーキングはここを起点にするのがいいだろう(①)。
ウォーキングを楽しむには、けがをしないことが一番。準備体操は時間をかけて念入りに行おう。緩やかに、大きな動きで全身の関節をほぐし、筋肉を温めることが重要である。駐車場で体操をし、水汲み場で水筒を満たしたら、川を左手に見ながら出発だ。
川沿いの道を少し進むと、右手の公民館の脇から、2番目の湧水、泉水湧水(せんすいゆうすい)のため池に入っていける(②)。まろやかで飲みやすく、また透明度も高くて人気の湧水だ。
田園風景の中に立つひときわ大きな建物は、竹田の湧水と豊富な地下水を利用してつくられる、もやし「名水美人」の生産工場。これを右手に見て、しばらくは住宅と田畑が並ぶ県道竹田五ヶ瀬線を行く。長瀬橋を渡る手前(③)、右に分かれる坂を登ると、「美しい日本の歩きたくなるみち500選」*1にも選定された自然豊かな林間の道(⑨)に入るが、2023年3月現在、仮設道路板等の腐食により歩行が危険な状態となっているため、今回は別のコースをとることとした(同箇所は取材後改修され、2023年11月現在は歩行可能)。*1 美しい日本の歩きたくなるみち500選:2004年、一般社団法人日本ウオーキング協会が国土交通省などの後援のもと、全国から選定したコース。日本の美しい四季と景観、地域の観光資源、歴史資源、文化遺産、食の道などを訪ね歩くことを目的とする。
しばらく県道を歩き、右手の草むらに「長小野湧水」(ながおのゆうすい)の看板が見えたら、ここを右折して再び川を渡る(④)。柵の低い小さな石橋で、水量の豊富な緒方川の流れを間近に感じることができる。
ここからは車1台やっと通れるくらいの細い道を歩く。住宅も少なくなり、川の流れを見下ろしながら田んぼのあぜ道を行く、のどかな風景だ。塩井湧水(しおいゆうすい)には、数台の車が停められる駐車場と水汲み場が設置されており、歩きに自信のない人はここから歩き始めるのもいいだろう(⑥)。
岩場にたたずむ静かな水源で喉を潤して、歩き疲れた体と心を落ち着けたら、ここから本格的な林間の道に入っていく。コースの中で唯一、車が通行できない箇所なので、左に流れる川の音を聞きながら、木々に囲まれる小道を存分に楽しみたい。
林の中をしばらく行くと左手奥に見えてくる大きな石橋が、このコースの折り返しポイントであり、一番の見どころである明正井路第一拱石橋(めいせいいろだいいちこうせききょう)だ(⑦)。水田開発のため、ほぼ1世紀前の1919(大正8)年に架けられた農業用の水路橋で、橋長78mの石造6連アーチの迫力は圧巻である。
明正井路第一拱石橋の先にある人道橋を渡り、折り返しルートに入る。再び県道竹田五ヶ瀬線を行くと、左手に2つ目の石造アーチ橋・住吉橋(すみよしばし)を見られる(⑧)。こちらも大正時代の2連アーチの橋。1922(大正11)年に架けられた古い橋だが、人や車が渡ることができる現役の生活道路として使われている。住吉橋を左手に見て通過すれば、④からは往路をたどる。同じ道を戻るのは疲れも相まって気が緩みやすいが、車通りのある道なので、気を引き締めてもう一息頑張ろう。
河宇田湧水には屋根のついた休憩所があり、戻ったらすぐにでも座って休憩したいところだが、そこは一度我慢。歩き終わったら必ず整理体操でクールダウンしよう。整理体操は足を中心に行うのがポイント。収縮した筋肉をリラックスさせることで、疲労回復につながる。スタート前と同様、駐車場で体をほぐしたら、ラーメン店や郷土料理店に立ち寄って、今度は舌で竹田を味わいたい。
NPO法人大分県ウオーキング協会が主導して、県内の「美しい日本の歩きたくなるみち500選」のコース選定が始まった時に、このコースを候補に入れました。ウォーキングコースの設定は、まず地図で確認し、車で行ってみて、その後実際に歩くのが基本。一連の調査期間に3~4カ月かけて、その間に6回ほど歩いて決めました。大分県では11のコースが「500選」に選ばれましたが、こうした湧き水を巡るコースは、全国でもあまりないんじゃないかと思います。
河宇田湧水の駐車場に車を置いて歩く方が多いですが、電車で来られる方は大体、JR九州・豊肥本線の豊後竹田駅からタクシーを使われます。ご紹介したコース中にはトイレがないので、スタート前に河宇田で済ませるのがいいと思います。車だと歩き終わった後にお酒は飲めないですが、「こっとん」でラーメンを食べていかれる方も多いですね。
私のお気に入りは、塩井湧水から明正井路にかけての林間の道(⑥~⑦)です。車が通らず、自然が感じられて、雰囲気が良い。長瀬橋の北側から入る道(⑨)も好きなのですが、こちらは2022年の台風で足場が悪くなりとても危険なので、改修工事が終わるまでは通らない方がいいでしょう(編集部注:取材後の2023年11月現在、改修工事が完了しており、歩行可能)。
周辺のおすすめスポットは、「500選」のコースにもなっている岡城跡と城下の町並み、それから地元では「こうとうさま」と呼ばれて親しまれている扇森稲荷(おうぎもりいなり)神社。食べ物なら鱒(ます)料理と、とり天がおすすめです。
PROFILE
髙瀨義英(たかせ・よしひで)
1949年、熊本県生まれ。就職で竹田に転居した。40代の時に半年ほど入院したのをきっかけに、健康のためにできる運動を探していたところ、テレビで流れたウォーキング大会のコマーシャルを見て、ウォーキングを始める。2001年のNPO法人大分県ウオーキング協会発足にも携わった。
「美しい日本の歩きたくなるみち500選」が選定されたのは2004年のことです。選定にあたって、大分県には11というコースの枠が割り当てられ、それに沿って当協会と県内各エリアのウォーキング協会でコース選定を進めていきました。
コースを決めるポイントは、竹田なら湧水、院内(宇佐市院内町)なら石橋といったような「見どころ」があるかどうかです。歩いて下見をする際に、歩きやすさやトイレの位置などと併せて、ある程度の距離ごとに歩く人を飽きさせないようなポイントがあるかを必ずチェックします。そうして各協会から寄せられたコースの候補を11に絞り込んでいきました。
日出町城下、城下絶景のみち | 日出町 |
湯布院田園のみち | 由布市 |
リアス式海岸・四浦半島海辺のみち | 津久見市 |
坂道の城下町きつき探訪と水辺のみち | 杵築市 |
清流と石橋散策のみち | 宇佐市 |
竹田御城下・石橋と入田湧水群を巡るみち | 竹田市 |
久住高原・北瀧ロマン街道 | 竹田市 |
滝と石仏、水車通り | 豊後大野市 |
温泉と花のんびり散策路 | 別府市 |
三重の桜並木と市場通り | 豊後大野市 |
歴史と文学寿司のみち | 佐伯市 |
ウォーキング初心者の方は、安全で楽しいウォーキングをするために、初めはウォーキング大会に参加するといいかもしれません。大分県内では、それぞれ毎月1回開かれる2つの県主催の大会に加え、各エリアで開かれる大会があり、ほぼ毎週どこかでウォーキング大会が開催されています。大会ではコースの見どころを知れるのはもちろんですが、公認指導員がついて、歩行中のペース配分や、スタート前と終了後に、日本ウオーキング協会が定めた準備体操、クールダウンなどを行うので、基礎的なところからウォーキングを学べるのも利点です。
大会に出て各地に知り合いができるのも、ウォーキングの楽しみのひとつです。大分の大会に県外の方が来られることもありますし、反対に大分から県外の大会に参加する人もいます。私自身も、10年近くかけて47都道府県を歩いて回りました。おかげで日本中に知り合いができましたよ。
年に1回、1,000人規模が参加する全国大会も大分県内で開催します。コロナ禍の影響でしばらくできていませんでしたが、2023年10月、久しぶりに開催することになりました。コースの選定はこれからですが、通例、5km、10km、20km、30~40kmの4コースを用意します。初めは長距離はつらいかもしれませんが、5km、10kmの大会で回数を重ねて慣れてくると、景色を見る余裕が出てきます。ぜひいろいろな大会に参加してみて、大分の自然やお寺、神社などを楽しんでください。
PROFILE
三浦健司(みうら・けんじ)
1949年、大分県生まれ。体調を崩したのをきっかけに、生活環境改善のためウォーキングを始める。半年ほど続けると、目に見えて体重が減ったことに手応えを感じ、ウォーキングのとりこに。全国のウォーキング大会に参加するようになる。