風林
光水
photo&writing:相原 正明
風林
光水
photo&writing:相原 正明
大分での撮影では、空と大地の広がりを意識させられることが多い。本州の険しく切り立った山々と比べると、丸いお椀を伏せたような柔らかい形状の山が目につく。そのためなのだろう、大地の高みに立つと風景を高く広く見渡せる。
今回の旅で初めに訪れた玖珠(くす)町の伐株山(きりかぶさん)。山頂にはパラグライダーが天に向かいテイクオフ(離陸)するステージがあった。ここから眺める山並みと玖珠川が織り成す景観は絶景だ。
続いて、豊後水道に突き出した半島の山の上にある、蒲江に近い高平キャンプ場を訪れた。360度の展望。ここのバンガローで一晩、海と空と月と星を眺めながら過ごした。これまで広大な大地オーストラリアを含め、世界中でキャンプをしてきたが、高平キャンプ場の天空の景観は、人生の中で見た絶景の3本指に入る。朝夕夜と、写真家を休ませてくれない素晴らしい天空が広がっている。
大分には「天」や「空」という文字を付けたスポットが多いように思う。そのものずばり「のつはる天空広場」。ななせダムの湖を見下ろす、天に浮かぶステージのような広場。ここから高崎山、由布岳、そしてくじゅう連山までを見渡せる。夏の夕暮れ、ここで流れ行く雲を見ながらボーッとしたら最高だろう。
今回のクライマックスは佐伯(さいき)に近い「空の展望所」だ。海から満月が登場。月は昇るにつれて色と形が変化する。たった一人、天空のドラマと向き合い、気づくと既に3時間近く経過、海には月光の帯が輝いていた。
最後に誰もが手軽に味わえる天空の高みをご紹介しよう。別府市の鶴見岳だ。別府ロープウェイでわずか10分程度で鶴見山上駅まで上がると、そこには圧巻の景観が待っている。まさしく空の近さを感じる。空と会話をしたくなったら、大分に来ることを心からお薦めしたい。
PROFILE
相原正明(あいはら・まさあき)
写真家。1958年生まれ。学生時代より北海道、東北のローカル線、ドキュメンタリー、動物、スポーツなどを撮影。1988年に8年勤務した広告会社を退社し、オートバイによる豪州単独撮影ツーリング実施。豪州最大規模の写真ギャラリー「ウィルダネスギャラリー」で日本人初の大型写真展開催。他にもドイツ、アメリカ、韓国でも個展を開催。タスマニア州政府フレンズ・オブ・タスマニア(親善大使)の称号を持つ。「しずくの国」(Echell-1)、「ちいさないのち」(小学館)、「誰も伝えなかったランドスケープフォトの極意」(玄光社)など著書多数。