風林
光水
photo&writing:相原 正明
風林
光水
photo&writing:相原 正明
この2年半、自動車で大分の道を走るたびに、「ここをバイクで旅したらパラダイスだろうな」という願いが抑え切れなくなっていた。ついに今回はその願いを果たすべく、東京から愛用のバイクで大分に向かった。
神戸六甲港からフェリーに乗り、早朝、西大分港に到着。真っ先に由布院・狭霧台(さぎりだい)を目指した。朝霧たなびく由布院の町並みを一望するワインディングロードを走る醍醐味は格別だ。そのままやまなみハイウェイで久住(くじゅう)高原まで駆け上がる。
飯田(はんだ)高原の丘を駆け上がると、くじゅう連山がそびえている。そこから、ぐるっとくじゅう周遊道路に入る。地熱発電所、温泉、そして男池という湧水が出る森がある。高原、森、丘陵と変化が楽しい。
一番の絶景ポイントが「天空のプロムナード」。これまで本連載「from OITA 大分を巡る」の撮影でもよく訪れた。そのあとは「のつはる天空広場」、そして景観美で知られる耶馬渓(やばけい)の「一目八景(ひとめはっけい)」界隈など、緑のトンネルの中を突き抜ける大分の山道のライディングを堪能する。
自動車と違い、バイクだと山の標高差で森の香りの違い、さらに雨が来る直前の香りも体験できる。山の香りを満喫したら次は海の香り。大分県南部のリアス海岸のワインディングを走る楽しみ、そしてグルメの楽しみ。
豊後くろしおラインを通る途中、映画「釣りバカ日誌」のロケ地にもなった「空の公園・空の展望所」から日向灘(ひゅうがなだ)と遠くに四国を一望する。蒲江(かまえ)から佐伯までの海岸沿いの道は、小さな入江の漁港をめぐり、波打ち際の道を走り、時にはアップダウンで海から空に駆け抜ける道。「楽しい」。ヘルメットの下で思わず笑みがもれる。佐伯に着く頃、来年もまた走りに来るぞと心に決めた。大分の道に僕は虜になった。
PROFILE
相原正明(あいはら・まさあき)
写真家。1958年生まれ。学生時代より北海道、東北のローカル線、ドキュメンタリー、動物、スポーツなどを撮影。1988年に8年勤務した広告会社を退社し、オートバイによる豪州単独撮影ツーリング実施。豪州最大規模の写真ギャラリー「ウィルダネスギャラリー」で日本人初の大型写真展開催。他にもドイツ、アメリカ、韓国でも個展を開催。タスマニア州政府フレンズ・オブ・タスマニア(親善大使)の称号を持つ。「しずくの国」(Echell-1)、「ちいさないのち」(小学館)、「誰も伝えなかったランドスケープフォトの極意」(玄光社)など著書多数。