風林
光水
photo&writing:相原 正明
風林
光水
photo&writing:相原 正明
秋の黎明(れいめい)、耶馬溪(やばけい)で光を待つ。闇の中に、うっすらと赤が浮かんでくる。「やっと見ることができたな」と、感慨深い。
遠く高校時代にさかのぼる。修学旅行は秋の九州で、旅行1日目にバスで向かったのが耶馬溪。バスガイドさんの「ちょっと紅葉には早かったようです。ぜひまた大分に来て紅葉の耶馬溪を見てくださいね。九州一の紅葉ですよ」という言葉が耳に残っていた。
40年以上かけて夢かなう、だった。実はオーストラリアに行くまで僕は、日本の風景写真というものに関心が無かった。ダイナミックな地球の息吹を感じさせる風景が好きで、日本は箱庭のようだと感じていたからだ。
だが四季のない大陸に行き、国外から見ることで、日本の四季折々に変わりゆく繊細な風景の魅力を発見できた。
大分を旅するようになり初めて知った紅葉の名所がある。猿飛千壺峡(さるとびせんつぼきょう)と宇佐のマチュピチュと呼ばれる西椎屋(にししいや)の景。国東半島の古寺と紅葉のコラボレーションなどなど。
大分の紅葉は、信州や東北と異なり少しアジアの風の香りがする。それは南の土地のなせる業かも知れない。僕と大分との関係は現在進行形。ロケに行くたびに新しい発見があり、新しい土地との恋が始まる。
PROFILE
相原正明(あいはら・まさあき)
写真家。1958年生まれ。学生時代より北海道、東北のローカル線、ドキュメンタリー、動物、スポーツなどを撮影。1988年に8年勤務した広告会社を退社し、オートバイによる豪州単独撮影ツーリング実施。豪州最大規模の写真ギャラリー「ウィルダネスギャラリー」で日本人初の大型写真展開催。他にもドイツ、アメリカ、韓国でも個展を開催。タスマニア州政府フレンズ・オブ・タスマニア(親善大使)の称号を持つ。「しずくの国」(Echell-1)、「ちいさないのち」(小学館)、「誰も伝えなかったランドスケープフォトの極意」(玄光社)など著書多数。