風林
光水
photo&writing:相原 正明
風林
光水
photo&writing:相原 正明
森の中から突然現れた、巨大な滝。その存在感と圧倒的なパワーに僕はひれ伏した。東椎屋(ひがししいや)の滝。大地から集められた水がエネルギーを伴い、世界に打ち出されている。そんな感じの場所だった。この日、実は同じ宇佐市内にある福貴野(ふきの)の滝を前に、「こんなすごい滝があったのか!」とすでに圧倒されたばかりだったのに。
大地のエネルギーが集まる滝というのは、撮っているととても元気になる。今回はこのほかにも、豊後大野市の原尻(はらじり)の滝、沈堕(ちんだ)の滝と合わせて4つの滝を巡った。いずれも撮影をしながら大地、そして滝から元気をいただいた気がする。
大分の地を撮り始めて1年になろうとしている。最初の撮影の旅も水から始まった。今回はもう一度その原点に戻り、水を通して大分を撮ることにした。
宇佐市の岳切渓谷(たっきりけいこく)と、由布市の由布川峡谷(ゆふがわきょうこく)を再訪した。どちらも街中から近いところにこんな素晴らしいところがあるのかとあらためて驚く。自然と街のほどよい近さが大分の魅力なのかなとも感じた。
1年前に気づかなかった視点、水の表情が多々あった。
「変化する水は写真家にとり永遠のテーマだ」と、駆け出し写真家の頃に先輩から教えていただいたことがある。大分で滝や渓谷の様々な水の表情、その変化を目の当たりにすると、まさにその通りだと実感した。
1年前と比べて、自分が大分の大地と光と水にシンクロしつつあることを感じる。水も光もそして写真家も常に変化するものだ。東椎屋の滝壺で、宙に輝き放たれる、水の粒子を眺めながらそう感じた。そして変化しないものがあることも。それは大地の力と自然の心。大分にはそれが息づいている。
PROFILE
相原正明(あいはら・まさあき)
写真家。1958年生まれ。学生時代より北海道、東北のローカル線、ドキュメンタリー、動物、スポーツなどを撮影。1988年に8年勤務した広告会社を退社し、オートバイによる豪州単独撮影ツーリング実施。豪州最大規模の写真ギャラリー「ウィルダネスギャラリー」で日本人初の大型写真展開催。他にもドイツ、アメリカ、韓国でも個展を開催。タスマニア州政府フレンズ・オブ・タスマニア(親善大使)の称号を持つ。「しずくの国」(Echell-1)、「ちいさないのち」(小学館)、「誰も伝えなかったランドスケープフォトの極意」(玄光社)など著書多数。